真珠は美しい宝石ですが、ダイヤモンドやサファイアなどとは雰囲気が異なりますよね。
輝き方も独特ですし、他の多くの宝石のようにカットが施されることもありません。
真珠のジュエリーは好きだけれど、「実は真珠のことを詳しく知らない」「不思議だと思うことがある」「天然と養殖の違いがわからない」といった声を耳にすることがあります。
そんな皆さまへ、真珠がなぜできるのか、その仕組みや種類、養殖真珠と天然真珠の違いなどについて詳しくご紹介します!
目次
貝から生まれる宝石、真珠
真珠は生きた貝の中で作られる宝石です。
世界最古の宝石ともいわれており、多くの伝承や神話、古い文献などにも登場します。
昔の人は、貝の中にある真珠を見て「貝の中に月の雫が宿った」「貝が人魚の涙を飲み込んだ」などと信じていたそうですよ。ロマンティックですよね。
食べようと思って開けた貝の中から光沢感のある美しいものが出てきたら、驚くとともになんだかとても尊いものに感じてしまうのも分かる気がします。
カットを施さなくても美しい輝きを放つことも、真珠の神秘性を高めているのかもしれませんね。
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なぜ貝は真珠を作るのか
ではなぜ、貝は真珠を作るのか。
貝は心臓や胃や腸もある動物です。
そして、外敵などから自分の身を守るための貝殻を自らがもつ外套膜(がいとうまく)という器官で作っています。
この貝殻を作り出すのと同じ、外套膜の機能によって真珠も作り出されます。
そうは言っても、貝が単なるきまぐれで真珠を生み出しているわけではありません。
何かのきっかけで体内に入った異物から自分の身を守るために作り出すと考えられています。
真珠ができる貝の種類は限られていますし、異物が入るという偶然も重なってできるため、天然の真珠はとても希少なんですよ。
真珠が作られる仕組みと構造
普段の食事で食べることもあり、身近で馴染み深い生物である、貝。
その貝からどのようにあの美しい宝石、真珠が生み出されるのか、もう少し具体的にお話していきましょう。
真珠が作られる仕組み
前述したように、真珠は貝が体内に入った異物から自分の身を守るために作り出すと考えられています。
例えば天然真珠の場合、砂などの異物が何かの拍子で偶然貝の体内に入ったとします。
そうすると、異物を取り込むような形で真珠袋と呼ばれる袋状の組織が作られます。
その後、真珠袋の中で異物を包み込むようにして貝殻と同じ成分から成る層(真珠層)が出来上がります。これが真珠です。
養殖真珠の場合は、異物の代わりに、核と呼ばれるものを人為的に入れます。
真珠の成分
真珠の主な成分は炭酸カルシウムです。
前述した真珠層は、炭酸カルシウムであるアラゴナイト(霰石)結晶層と、外套膜より分泌されるたんぱく質(コンキオリン)の薄いシートが、交互に、そして幾重にも重なり同心円状の層を成し出来上がります。
真珠層の厚みは均一に出来上がる訳ではなく個体差があります。厚いものもあれば、薄いものもあり、真珠層が厚い程、価値が上がります。
ちなみにアラゴナイトは、自然界で鉱物として生成するものもあるんですよ。
生物が鉱物を生み出すなんて、まさに自然の神秘だと思いませんか。
真珠の構造
真珠を二つに切ってみると中心に核(天然の場合は異物など)があり、それを覆うように真珠層があります。
さらに細かく見ると、真珠層と核の境界に、有機質層と稜柱層と呼ばれるものができることもあるそうです。
話が少しそれますが、真珠独特の光沢感は真珠層の重なりによって生まれるといいます。
真珠層の薄い膜の重なりの中に光が入った時、光の回折と干渉という現象が起こり、それが一つの要因になっているといわれています。
シャボン玉が七色になる現象と近いみたいですよ。
ちなみに、真珠の品質のことで「テリ」や「巻き」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
前述した、光の回折と干渉によって生まれるものだけを指す訳ではないですが、真珠特有の光沢のことを総じて「テリ」、真珠層の厚みのことを「巻き」と呼びます。
この「テリ」と「巻き」が真珠の品質を左右しますので、良かったら覚えておいてくださいね。
養殖真珠はどうやって作られる?
現在、世界各地で行われている真珠の養殖。お店で目にするほとんどが養殖真珠です。
養殖真珠がどのように作られているのかについても、詳しくご説明していきましょう。
養殖真珠の作られ方
最も代表的なアコヤ真珠の養殖工程を例に説明していきますね。
1.母貝の準備
真珠を養殖するためには、まず母貝が必要になります。
アコヤ貝の場合、海中で稚貝を作り育てる天然採苗という方法と、水槽の中で稚貝を作り海で育てる人工採苗という方法のどちらかで母貝を確保しています。
2.仕立て
次に、「仕立て」という母貝の状態を整える準備をします。
この後に行う、核を入れる手術は生き物である貝に大変大きな負担を強いるものとなります。手術の後、死亡してしまうものもある程です。
そのため、貝が手術に耐えられるように行う工程が「仕立て」です。
貝の活力や生殖巣の発達を抑えるために、水の流れを感じにくい特別なカゴに入れて、一定期間置きます。
そうすることで手術による過剰反応が起きないようにするのです。
3.核を入れる
貝の中へ核を入れる工程を「挿核手術」といいます。
特殊な器具で貝殻を少し開けて、内臓部分の表面をメスで切ります。
そして、生殖巣までの導入路を作り、核と外套膜の破片(ピース)が密着するようにその路にピンセットで挿入します。
この挿核手術には高い技術力が必要です。
挿核手術の出来によって、でき上がる真珠の品質も変わってしまうほど大事な技術なんですよ。
4.養生
挿核手術の後は、貝の体力回復期間を設けます。
30日前後の間、貝をカゴにいれてイカダに吊って休ませるのです。
挿核手術に耐えられなかった貝は、この養生期間に死亡してしまったり、核を吐き出す「脱核」などをしてしまったりするそうです。
それだけ、貝にとって大変な手術ということですね。
5.沖出し
30日ほどの養生期間が終わると、沖合いに貝を移動させます。
6.養殖期間
養殖期間が始まります。
真珠の養殖期間の長さは核の大きさや漁場によって異なりますが、半年から2年くらいが一般的です。
この期間、真珠が生成されるのをただ待つだけではありません。
海事作業と呼ばれる、貝殻の表面についたフジツボなどを取り除く「貝そうじ」や、貝殻に孔をあけようとする付着動物を駆除するための「塩水処理」などを行い、貝が健やかに過ごせるような環境を整えます。
7.浜揚げ
真珠養殖の最終工程が浜揚げです。
真珠を貝から採取することを指します。
浜揚げが行われるのは、日本の場合12月から1月の冬の寒い時期です。
この時期に浜揚げする理由は、真珠の「テリ」が、寒い時期に出てくるからなのだそうです。
養殖場によっては、水温が下がり始める9月から11月にかけて「化粧巻き漁場」と呼ばれる場所に真珠を移し、仕上げ期間に入るといいます。
これにより、艶が良く美しい干渉色を放つ真珠層が作り上げられるのだそうですよ。
養殖真珠と天然真珠、でき方は同じ?違いや見分け方はある?
画像:左-南洋真珠(養殖) 右-コンクパール(天然)
ここまでお話してきたように、養殖真珠も天然真珠も基本的なでき方は同じです。
両者の最も大きな違いは、真珠が作られるきっかけです。
天然真珠が異物が偶然入ることにより自然に作られるのに対し、養殖真珠は人が意図的にきっかけを作って貝に真珠を作らせます。
それ以外の真珠が作られる仕組みなどに大きな違いはありません。
養殖真珠と天然真珠の違い
それでは、出来上がった真珠に全く違いはないのでしょうか。
養殖真珠と天然真珠の決定的な違いは母貝に人の手が加えられるかどうかです。
人の手が加えられることで、養殖真珠は天然真珠よりも形や数などをコントロールしやすくなります。
養殖真珠の技術が発展したお陰で、真円や半円のものを作り上げることも可能になりましたし、天然よりも数多く作り出すこともできるようになりました。
養殖真珠と天然真珠の見分け方
「養殖真珠の場合、人為的に核を入れるということは、核がある真珠は全部養殖ってこと?」
そう思われるかもしれませんね。
しかし一概にそうとは言えません。
実は、核を入れずに外套膜の一部(ピース)だけを入れて作る無核真珠もあるからです。
淡水養殖真珠の大半は無核真珠のようですよ。
先程お話したように、養殖真珠の方が全般的に形が綺麗なものが多いように思いますが、全てではありません。
そのため、見た目だけで養殖か天然かを明確に見分けることは難しいです。
しかし鑑別機関などで専門の機材を使って調べれば大体分かるそうですので、気になる方は相談してみてくださいね。
母貝が違うと何が違う?
真珠は、色や大きさなどいくつかの種類がありますよね。
その種類の違いは、真珠を生み出す母貝の違いです。
母貝のもつ色や大きさによって生成される真珠の色や大きさも変わってきます。
大きさについては、養殖期間も関係しています。
母貝に入れる核の大きさも関係しているため、全ての真珠のサイズが養殖期間と比例しているわけではありませんが、一般的には貝の中に長くあるほど真珠層が厚くなりサイズも大きくなります。
それでは、真珠ができる母貝にはどのような種類があるのか、主なものを紹介していきます。
アコヤ貝
アコヤ貝は、アコヤ真珠の母貝です。
アコヤ真珠の色は、白や淡いピンク色が一般的です。冠婚葬祭などで使われることも多い、連のネックレスなどによく見られる色合いですね。
アコヤ貝は5cm程度の比較的小さな貝で、1年間に約0.35mmの厚さの真珠層を作るといわれています。
標準的なアコヤ真珠の大きさは6~7mmほどで、9mm以上のサイズは大変珍しいです。
シロチョウ貝
シロチョウ貝は、白蝶(シロチョウ)真珠の母貝です。
白蝶真珠はシルバーやゴールドが多いです。
シロチョウ貝はアコヤ貝よりも大きく、中には30cmm以上になるものもあるといいます。生息区域は主に赤道近くの熱帯の海です。
白蝶真珠は9~18mmほどのサイズが多いです。
母貝が大きいこと、水温の高い海で生成されること、養殖期間が2年以上と長いことなどが、白蝶真珠のサイズが大きくなる理由だそうです。
クロチョウ貝
クロチョウ貝は黒蝶(クロチョウ)真珠の母貝で、主にサンゴ礁に生息しています。
貝の大きさは15cm程度でシロチョウ貝の半分くらいのサイズです。
色はブラックからグレーが多く、最高品質はピーコックカラーと呼ばれるグリーン味を帯びたブラックのものです。
クロチョウ貝は、真珠層の縁が黒緑色になっています。
そのため黒緑色の真珠を生成するということなんだそうです。
マベ貝
マベ貝はマベ真珠の母貝で、主に熱帯から亜熱帯の海に生息しています。
マベ真珠の色は様々ですが、他の真珠よりも虹色の光沢が強いことが特徴です。
マベ真珠はアコヤ真珠などと異なり、主に半円形をしています。
理由は、アコヤ貝、シロチョウ貝、クロチョウ貝とは生物学的に少し分類が違うそうで、マベ貝で真円の真珠を作ることは、現在の養殖技術ではまだ困難なようです。
イケチョウ貝
イケチョウ貝は、主に湖や川に生息している淡水貝です。
淡水貝であるイケチョウ貝で作られる真珠は淡水真珠と呼ばれます。
淡水真珠はイケチョウ貝以外に中国原産のヒレイケチョウ貝や、カラス貝などからも採ることができます。
淡水真珠の色はホワイト系やオレンジ系などが多いですが、それ以外もあり、他の貝を母貝とする真珠よりも色のバリエーションが豊富です。
また、イケチョウガイの多くは核を入れずに外套膜の一部(ピース)だけを移植して作る無核真珠ですが、霞ヶ浦では有核真珠の養殖も行われているそうです。
最後に
今回は真珠(パール)がなぜできるのか?、その仕組みや種類、養殖真珠と天然真珠の違いについて詳しくご紹介しました。
真珠は貝という生命の力によって生まれるため、その美しさは神秘的に感じられるのだと私は思います。
この記事で、みなさんが真珠をより身近に感じていただけたら嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『有名石から超希少石まで美しい写真でよくわかる 宝石図鑑』
著者:KARATZ 監修:小山慶一郎/発行:日本文芸社
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『世界を魅了する 美しい宝石図鑑』
著者:ジュディス・クロエ 日本語版監修:石橋隆/発行:創元社 ほか