金色のシーンが美しい青色のサファイア、『ゴールドシーン サファイア』。
日本には2018年の展示会で初めてお披露目し、人気を集めていました。
まだまだ謎の多いゴールドシーンサファイアですが、この正体や魅力に迫ります。
ゴールドシーンサファイアとは?
ゴールドシーンサファイアとは上記の写真のように「金色に輝く」サファイアのこと。
従来のサファイアとは区別された、コランダムの「新種」として扱われています(Journal of Gemmology, Vol. 34, No. 8, 2015, pp. 678–691より)。
その青と金のコントラストは個人的に「和」のテイストを感じます。「金屏風」を連想するからですかね。
なおアフリカのケニアが産地とされていますが、鑑別機関では2019年現在このゴールドシーンサファイアの産地分析は未だ研究途中。
その成分の類似性から「同じ産地を由来としている可能性がある」とGIA Tokyoからは報告されています。
なお原文ではこの可能性について、「possibly」という比較的低い確率の時に使われる副詞が用いられています。
何しろ流通量が少なすぎて研究サンプル数が限られるため、産地に関して100%の結論を出すまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
なんといってもその金色の輝きが魅力
ゴールドシーンサファイアの最大の魅力は、なんといってもその金色の輝き。
なおゴールドシーンの「シーン」は景色や情景という意味ではなく、英語で書くと「Sheen」、つまりツヤや輝きを意味します。
上の写真は裏から光をあてた時の写真で、その輝きはまるで宇宙に浮かぶ地球。
青い部分(海の部分!?)はコランダムですが、金色の部分は赤鉄鋼やチタン鉄鋼の針状インクルージョンで出来ています。
成分的にはイルメナイト、ヘマタイト、マグネタイトといったもので、それがサファイアの中に針状に入り込むことで光を複雑に反射し、その独特な「金色の輝き」を生んでいるのだとか。
キレイですね!
本当にサファイアなの?を巡る研究バトル
ゴールドシーンサファイアの採掘が報告されたのは、2000年代前半。
場所はケニア北東のある鉱山でした(重ねて言いますがゴールドシーンサファイアの産地鑑別は、2019年現在まだ方法が確立できていません)。
実はこの地域はサファイアの成分であるコランダムがこれまで全く採掘されていない地域。しかもこの鉱山は既に閉山済み。
世界の鑑別機関は「このゴールドシーンサファイアが、果たして本当にサファイアなのか」を綿密に調査します。
そして2015年。
イギリスの宝石鑑別機関Gem-Aが「ゴールドシーンサファイアがコランダムの1つのバリエーションであること」を報告します。
その後はGIAやAIGS、GRSなどの宝石鑑別機関がこれに続きます。
やはり、1つの石について各国の研究機関がレポートを出すまでには10年以上の時間がかかるんですね。
宝石学がリアルタイムの学問であることを感じ、胸が熱くなります。
様々な光学効果が魅力
さて、ゴールドシーンサファイアにまつわる光学効果でポピュラーなのがアステリズム効果。
つまりスターサファイアの様な「星彩効果」を見せるゴールドシーンサファイアが存在します。
もちろん全てのゴールドシーンサファイアにこのようなアステリズム効果があるわけではないですが、魅力の1つです。
また筆者は実物を見たことは無いのですが、変色効果のあるゴールドシーンサファイアも報告されています。
上の写真は左から、
- 3000ケルビンの暖色光を当てた時
- 5000ケルビンの寒色光を当てた時
- 自然の太陽光の下
のゴールドシーンサファイア。一度は見てみたいなと思います!
「加熱処理ができない」という性質
通常の多くのサファイアは加熱処理されています。
これは、加熱されていないそのままの状態のサファイアは、青色がくすんでいたり黒ずんで色が濃すぎる場合が多く、加熱処理によって色と透明度を整えているからです。
非加熱のサファイア(で色も良いもの)は珍しく、通常の加熱サファイアに比べて価値が高いことは、このブログの読者の方ならきっとご存知ですよね。
なんですが、実はゴールドシーンサファイアはどれも非加熱。
これはゴールドシーンサファイアのお値段が高い一つの原因でもあるのですが、
ゴールドシーンサファイアは、実は加熱処理が「できない」サファイアです。
というのも、ゴールドシーンの金色の輝きは、逆に加熱処理をすることで大きく色味を損なうと言われているからです。
このように「加熱処理ができない」性質が希少性につながり、価値の1つとなっています。
最後に
いかがでしたでしょうか。
金色のシーンが美しい青色のサファイア、『ゴールドシーン サファイア』
将来どのように評価されるかは注目の集まるところですね。