イエロー系宝石の代表ともいえるシトリン。
私はシトリンと聞くと、ジューシーで明るいイエローをした結晶が頭に浮かびます。
ところがシトリンについて調べてみると、実はイエローだけではなく、ゴージャスで深い色合いのものもあることを知りました。
そしてさらに調べていくうちに、シトリンはトパーズやアメジストと何やら特別な関係にあり、ヒミツをもっていることが分かりました!
そこで今回は、シトリンはどんな宝石なのか、その秘密や歴史、気になる石言葉などについて改めて色々調べてみました!
目次
シトリンとは?
冒頭でもご紹介したとおり、イエロー系宝石の代表的存在であるシトリン。
その色合いから、幸せを呼ぶ石といわれることもあるとか。
なんだか分かる気がしますね。
シトリンとはどのような鉱物なのか詳しく見てみましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Citrine(シトリン) |
和名 | 黄水晶 |
鉱物名 | クォーツ |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系/三方晶系 |
化学組成 | SiO2 |
モース硬度 | 7 |
比重 | 2.65 – 2.7 |
屈折率 | 1.54 – 1.55 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
シトリンは、クォーツ(水晶、石英)の変種の一つで、イエロー~オレンジに発色しているものを指します。
クォーツは単結晶のものと多結晶のものの大きく2つに分類され、多結晶のものはカルセドニーと呼ばれます。
単結晶のクォーツは透明度が高く、主に柱状結晶で産出されるもので、シトリンもこちらに含まれます。
ちなみに、単結晶のイエロー系のクォーツにはレモンクォーツもあります。
色合いによって見た目が似ているものもありますが、鉱物学上の違いとしては、鉄によって発色しているものをシトリン、硫黄によって発色しているものをレモンクォーツと呼ぶ、ということです。
ただし、鑑別上は色合いの違いによってのみ区別される場合が多いようです。
シトリンは劈開(へきかい)はないといわれ、比較的取扱いしやすい宝石のため、日常的なジュエリーとしても十分楽しめます。
色
シトリンは、先ほども述べたように、微量の鉄が作用して、イエローからオレンジに発色すると考えられています。
イエローの中にも色幅があり、淡いイエローは爽やかな、濃いイエローは元気な印象を与えます。
他にも褐色に近いイエロー、赤みがかったオレンジ、太陽の光のようにゴールドに輝くシトリンもあるそうですよ。
ポルトガルのマディラワインというお酒の色に似ていることから名付けられたマディラシトリンは、オレンジが強く色味の深いシトリンです。
想像以上に様々な色合いがあるのですね!
産地
シトリンはどこで産出されるのでしょうか。
調べてみると、産地は結構多いようです。
宝石品質のシトリンの産地として有名なのはブラジル、スコットランド、ロシア、インド、フランスなど。
他にも、スペイン、アフリカ、スイス、ドイツ、ウルグアイ、マダガスカル、チリ、スリランカ、日本でも産出されるそうですよ。
しかし実は・・・天然のシトリンが見つかるのはとても稀だといわれています。
稀だという割には、お店などでシトリンを見かけることが多い気がするのですが・・・一体どういうことでしょうか?
そのヒミツは、後程ゆっくりご説明しましょう。
原石の形
シトリンを始めとする単結晶のクォーツは、六方晶系や三方晶系で、主に六角柱の形で見つかることが多いといいます。
私はクォーツの大きな原石を持っています。
先が三角に尖っている六角柱の形で、手のひらよりもずっと長くて重く、とても冷たいです。
シトリンの原石は他に、母岩に六角柱の結晶がビッシリとついたものもあるそうです。
原石の状態から表面がツヤツヤしているので、そのまま飾ってもとても綺麗ですよね。
また、ペグマタイトの晶洞の中や、様々な鉱脈の鉱石の中、珪岩の中などで生成するのだそうですよ。
割れた断面は貝殻のように、ギザギザした感じになるそうです。
シトリンの意味
シトリンという名前には、どのような意味が含まれているのでしょうか。
シトリンの石言葉や何月の誕生石なのかも気になりますよね。
それでは、シトリンの意味について調べてみましょう。
名前の意味
シトリンの名前の意味については、資料によって違いがあります。
フランス語でレモンを表す「citron 」が由来という説。
檸檬に似たシトロンという柑橘類から名付けられたという説。
ラテン語でイエローを表す「citrina」という説も。
元々フランス語はラテン語から派生した言葉なので、ラテン語の「イエロー」が、フランス語で「レモン」になったのかもしれないな~、なんて想像してみました。
私はシトロンと聞くと、レモン味の炭酸水を思い出します。
宝石シトリンにも、そんな爽やかなイメージを個人的に抱いています。
和名は黄水晶です。
石言葉とその意味
シトリンの石言葉は、「友愛」「希望」「繁栄」「富」なのだそうです。
友愛とは、友達や兄弟などに感じる親愛の情のこと。希望とは、未来への望み。
そして、繁栄は豊かに栄えること。富とは、資源や財産が豊富にあること。
どれもシトリンの明るい輝きにピッタリな言葉ではないでしょうか。
シトリンをお友達や兄弟姉妹にプレゼントしたり、繁栄や富のお守りとして大切な人に贈ったり、自分へのご褒美にしても素敵だな~と思います。
誕生石
シトリンは11月の誕生石です。
オレンジが強いシトリンなどは、秋の紅葉を思わせるような深い色合いですよね。
シトリンは大粒でも手に入れやすい宝石なので、大胆で個性的なジュエリーを作ることも可能でしょう。
シトリンのジュエリーは、どんな年代の方でも、和装でも洋装でもよく合う気がします。
11月生まれの方への贈り物に最適ですね。
アメジストとの深い関係とは
冒頭で触れた、シトリンとアメジストとの特別な関係について、ご紹介しましょう。
それは・・・流通しているシトリンの殆どは、アメジストを加熱処理したもの、ということ。
私も最初はとても驚いたのですが、そもそもシトリンもアメジストも色合いこそ違うものの鉱物としては同じ(クォーツ)で、どちらも同じく鉄を発色元素にもっています。
そして、地球のエネルギーによる自然熱がアメジストに加えられたことで鉄イオンの状態が変化し、パープルからイエローに変わると考えられているそうなのです。
つまり、天然のシトリンも元々アメジストだったかもしれないということですね!
実際天然のシトリンは主にアメジスト鉱脈の中から見つかるといいますので、可能性は十分にあります。
自然の代わりに人間が加熱処理を施し、アメジストをシトリンに生まれ変わらせているというだけなのでしょう。
天然シトリンの産出量が少ないのに、数多く流通しているというヒミツは、コレだったのです!
ちなみに、現在流通しているシトリンは主にブラジル産のアメジストに加熱処理を施したものだそうですよ。
アメトリン
アメジストとシトリンが同じ鉱物であることを如実に表しているのが、アメトリンという宝石です。
一つの結晶に、アメジストのパープルとシトリンのイエローが両方発色しています。
地球のエネルギーの絶妙な匙加減によって生まれた宝石ともいえますね!
アメトリンという名前には、アメジストの「アメ」とシトリンの「トリン」が使われていますね。
和名は紫黄水晶(しおうすいしょう)。
アメジストが紫水晶でシトリンが黄水晶なので、これまた両方の名前をミックスしているのですね!
天然のアメトリンは主に、ボリビアのアナイ鉱山で見つかるのだそうです。
シトリンの歴史・伝説・言い伝え
シトリンの歴史は古く、何千年もの間、宝石として大切に扱われてきました。
古代ギリシャの人々は、ロッククリスタルやシトリンに彫刻を施していたそうです。
イギリスのビクトリア時代には、シトリンなどカラーストーンをあしらったジュエリーがとても人気だったそうです。
確かに、イギリスのアンティークショップで見たジュエリーは、装飾的でカラフルなものが多いという印象でした。
ローマ教皇も、大きなシトリンの指輪を身につけていたとか。
どんな指輪だったのか、見てみたいですね!
シトリントパーズとシトリンは同じ?
画像:左-シトリン 右-インペリアルトパーズ
シトリントパーズと呼ばれる宝石があります。実はコレ、シトリンのこと。
トパーズに色合いがよく似ていることから、ビクトリア時代のイギリスでトパーズの代用品としてシトリンが使われることが多かったのだそうです。
コレがシトリンとトパーズの特別な関係です。
トパーズの方が価値も人気も高いとされていた時代、シトリンの方が安価に手に入りやすかったのかもしれません。
昔は混同されることもあったようですが、現在は、硬度が違うことや鑑別技術の発達により、見分けるのは難しくないそうです。
シトリンにはシトリンの美しさがあるのに、トパーズの代用品にされるなんて、かわいそうですよね。
シトリンの偽物
シトリンにも偽物があるのをご存知でしょうか。
合成シトリンや、着色したガラスなどがあるようです。
ただ実際は、シトリンは比較的手頃な価格で手に入るものも多く、流通量もあるので、故意に偽物として販売することは少ないと思われます。
しかし意図せず紛れてしまい、シトリンとして販売されている可能性は否めないのが現状です。
シトリンの価値基準と市場価格
シトリンにはどのような価値基準があるのでしょう。
イエロ~オレンジと異なる色合いもありますが、色によって価値が違うのか、大体幾ら位で手に入れることができるのか市場価格も気になるところですよね。
何となくお手頃なものが多い印象がありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
シトリンの価値基準と市場価格について見てみましょう。
価値基準
シトリンは、他の多くのカラーストーンと同じように、色が鮮やかで透明度が高く、サイズが大きく、美しいカットが施されているものに高い価値が付くようです。
シトリンの中で最高品質といわれているものは、先程ご紹介したマディラシトリンと呼ばれるものです。
鮮やかで透明度が高く、深くて濃いオレンジ色のもの程、価値高く扱われます。
また、シトリンは比較的取り扱いしやすいことから、凝ったカットが施されることも多い宝石です。
高い技術が必要なカットや、有名なカット職人がカッティングしたものなども高い価値が付けられているようです。
市場価格
シトリンは数多く流通しているという印象です。
比較的お手頃な価格で売られているのをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。
大きさやクォリティによっては、数千円位で探すことも難しくないと思います。
凝ったカットが施されているものやクォリティが高く大きさもあるマディラシトリンになると、数万円以上するものもあります。
更に、有名デザイナーや有名ブランドによるジュエリーとなると、付加価値により数十万円以上の値段がつくこともあります。
シトリンのお手入れ方法
シトリンはモース硬度も靭性も高めであるため、日常使いのジュエリーとしても楽しめますが、手荒に扱えば傷が付いたり欠けたりする恐れはありますので、ご注意下さいね。
高温でヒビが入ることがあるそうですので、スチームクリーニングは避けてください。
他の多くの宝石同様、温めの石鹸水の中で優しく洗い、柔らかい布でそっと拭きましょう。
宝石同士がぶつからないように保管することも大切です。
また、中には退色する恐れがあるものもあるようですので、直射日光の当たる場所に飾ることなども避けた方が安心だと思います。
最後に
シトリンのヒミツなどについてお話しましたが、いかがでしたか。
一つ目のヒミツが、天然のシトリンは非常に珍しく、現在流通しているシトリンの殆どは、アメジストを加熱処理したものであるということ。
シトリンとアメジストは加えられる熱の温度によって色が変わるということも知りました。
もう一つのヒミツが、シトリンにはトパーズの代用品とされていた時代があったということ。
シトリントパーズという名前で呼ばれ、現在もその名残があるということです。
宝石学が発展した現代ではシトリンとトパーズが間違われることは少なく、シトリンの名誉が回復されたようで個人的にはとても嬉しく思います。
古代より人々に愛されてきた11月の誕生石でもあるシトリン。
これからもきっと長く多くの方に愛され続けることでしょう!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか
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◆https://www.gia.edu/