以前、ジュエリーの買取業務に携わっていた時、お客様から頂いたお問い合わせの中で特に多かったのがダイヤモンドについて。
ダイヤモンドの鑑定書についての質問も多く、例えば、
「ダイヤモンドを売りたいけど鑑定書がなくても大丈夫?」
「鑑定書が沢山あって、どれを持っていったら良いのか分からなくなってしまった」
「鑑定書がないと買取額が安くなるって本当?」
など。
自分の大切にしてきたダイヤモンドを売るのですから、そう言った不安や疑問が出てくるのは当然だと思います。
そこで今回は、ダイヤモンドの鑑定書の基礎知識、鑑定書がなくても買い取ってもらえるかとその場合の買取価格、買取業者を選ぶポイントなど過去の経験なども踏まえながら、お答えしていきます。
目次
ダイヤモンドの鑑定書とは
買取専門店などのホームページを見ると、「ダイヤモンドと一緒に鑑定書をお持ちください」という文言が書かれていることがよくあります。
鑑定書は宝石の鑑定・鑑別機関が発行するダイヤモンドの品質レポートです。
鑑別書はほとんどの宝石につけることができますが、鑑定書は基本的にダイヤモンドにしか付けられません。
一体どんな内容が書かれているのでしょうか。
①ダイヤモンドの基本情報
そのダイヤモンドの、カラット数(重量)、寸法(サイズ)、カット名、蛍光性などの基本情報が書かれています。
この情報がないと、どのダイヤモンドの鑑定書かわからなくなってしまいますよね。
ダイヤモンドジュエリーをいくつか持っていて、鑑定書がどれか分からなくなってしまったという場合は、ジュエリーに刻印されているカラット(ct)と鑑定書に書かれているカラット(ct)を照らし合わせてみると見分けやすいですよ。
②ダイヤモンドの評価(4C)
もう一つ重要なものが、ダイヤモンドの4Cです。
4Cとはダイヤモンドの評価基準のことです。
アメリカのGIAによって基礎が作られたといわれ、カラット(Carat)、カラー(Color)、クラリティ(Clarity)、カット(Cut)の4つの評価基準の頭文字から名付けられました。
検査したダイヤモンドがどのグレードなのかが書かれているため、査定の時の参考にされます。
高品質なダイヤモンドは希少性が上がるため、買取価格も高くなります。
ちなみに、ラウンドブリリアントカット以外のカットを施されたダイヤモンドはカットの評価はされず、カラット、カラー、クラリティの3つの評価となります。
③査定の時、鑑定書のどこを見る?
鑑定士が査定するとき、鑑定書のどこを確認するかというと、
まずはダイヤモンドの評価である4Cの項目をチェックします。
この項目を見るだけでも大まかな買取価格を出すことができるからです。
もう一つは蛍光性です。蛍光性の度合いによって買取価格が変わることがあります。
知り合いの買取専門店の方から聞いた話では、蛍光性でどれぐらい価格を変えるかはお店の方針によって違いがあるそうです。
度合いによって◯%下げると機械的に決めているところもあれば、4Cを考慮してフレキシブルに買取を行うところもあるそうですよ。
鑑定書がなくても買い取ってもらえる?
心配される方も多いのですが、鑑定書がないダイヤモンドでもほとんどの買取専門店で買い取ってもらえると思います。
お店のホームページなどを見てみると、「鑑定書なしでも査定可能です」と載せているところも沢山ありますから、事前にホームページなどで確認しておくと安心ですよ。
GIAやFGAなど宝石の有資格者がいるお店やお店で勉強会を開いて社員教育に力を入れているところなどもあります。
鑑定書がなくても買取が出来る体制を作っているお店に行くとより良いかもしれませんね。
鑑定書の有無で判定はどう変わる?
では、鑑定書がないと、どのように判定が変わるのでしょうか。
鑑定書があった場合、鑑定書とダイヤモンドを照らし合わせながら項目をチェックしていきます。
逆に鑑定書がなければ、まずはダイヤモンドが本物かどうかのチェックから始まります。
その後ルーペ(あれば顕微鏡)や紫外線ライトなどを使いダイヤモンドの4Cの評価をしていきます。
私が過去にお付き合いのあったお店の中には、高額買取になるダイヤモンドは数人でチェックをしているところもありました。
このため査定に時間がかかってしまう場合もあります。
鑑定書がないダイヤモンドを売りに出す時は時間に余裕がある時にいくと良いでしょう。
鑑定書がないと買取額が安くなるって本当?
鑑定書があるダイヤモンドとないダイヤモンドでは同じ品質のものでも査定額は変わってしまうのでしょうか。
私が買取業務に携わっていた時の経験や、買取業者の方のお話を踏まえて考えると、ほとんどのお店が鑑定書の有無で買取価格を変えていると思います。
どれぐらい価格が変わるかはお店の方針や鑑定士の実力、価格設定によって違っているようですね。
私が買取業務を行っていたお店では、鑑定書なしだと自分が見積もったランクよりも1〜2ランク落とした価格で買い取ることも多かったです。
過去に色々な買取業者さんと話をしてきましたが、やはり鑑定書がないと買取額は安くなる傾向にあるようです。
鑑定書がないということは第三者的立場での評価がないということですので、リスクが上がる分、低く見積もらざるを得ないということです。
4C評価の難しさ
4Cは本来、鑑定・鑑別機関で評価される場合は、ダイヤモンドのルース(裸石)を洗浄して埃や汚れを落とした状態で、顕微鏡でチェックしながら数人の鑑定士により慎重に決められるものです。
それに対し買取専門店ではお客様が使って汚れがついた状態のダイヤモンドをそのままルーペでチェックして査定することも多いです。
さらに買取専門店に持ち込まれるダイヤモンドの多くはジュエリーに加工されていますから、正確な4C を出すのは非常に難しく、どうしても誤差が出てしまうことがあるというのです。
そのため、なるべくリスクを減らすために買取額を下げるというお店が多いのだそうです。
事前に鑑定書を取った方が良い?
「鑑定書があった方が高くなるなら、売る前に鑑定書をとったほうが良いんじゃない?」と思われるかもしれません。
ですが、鑑定書がない場合は、そのまま買取に出す方が私は良いと思います。
ダイヤモンドの鑑定は基本ルース(裸石)の状態で行います。
そのため、鑑定書を取るにはダイヤモンドをジュエリーから外す→鑑定書を取る→ダイヤモンドをジュエリーにセッティングし直すという手順を踏まなくてはいけません。
それぞれ手間賃がかかりますし、そうして手間をかけて鑑定書を取ったとしても、それだけの元を取れるかどうかは実際に査定してみないとわかりません。
鑑定書の有無よりもダイヤモンドの大きさや美しさの方が重要です。
もし鑑定書を取った方が良いか気になるのであれば、査定の時に相談してみても良いと思います。
鑑定書を発行した機関によって買取額に差は出る?
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ダイヤモンドの鑑定書を発行している鑑定・鑑別機関は実は全国に沢山あります。
経験から言いますと、発行した機関によって買取額は変わってきます。
具体的にどういった違いで買取額に差が出るのでしょうか。
有名な機関かどうか
鑑定書を発行する機関にも実は色々なところがあり、規模も様々です。
多くの研究発表を行っていたり、世界的に名が知られる権威性の高い鑑定・鑑別機関もあれば、個人経営の小さな機関もあります。
日本で有名なのは、GIA米国宝石学会(GIA)、中央宝石研究所(CGL)、AGTジェムラボラトリー(AGT)などです。
これらで発行された鑑定書は業者間では「A鑑」と呼ばれることもあります。
また、一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(AGL)という日本の鑑定・鑑別機関を取りまとめている協議会があるのですが、ここに加盟している機関が発行する鑑定書をB鑑、それ以外の機関はC鑑と明確に分けて買取査定を行っているお店もありますね。
私自身、買取業務をしていた時は会社から、発行機関によって値段を変えるように言われていました。
A鑑でも古すぎる場合
たとえA艦と呼ばれる鑑定・鑑別機関であっても、鑑定した時期によっては新しく鑑定書を取り直さないといけない場合があり、そういった場合はその分安くなってしまうこともあります。
と言いますのも、鑑定基準が時代によって微調整されることもあるからです。
あまりに古い鑑定書をそのまま評価してしまうと、現在の評価と違っている場合があるのですね。
昔の方が評価が厳しく、現在は若干緩くなっているなんてこともあるので、「古過ぎる=安くなる」とは限りませんが、取り直しの手間などもあるため、査定としては安くなる可能性があります。
きちんとしたお店であれば、鑑定書だけでなくダイヤモンドも見比べながら価格を出してくれますので、お店を選ぶことも大切だと思います。
買取業者を選ぶ時のポイント
それではダイヤモンドを売る時、どうやって買取業者を選べば良いのでしょうか。
ダイヤモンドは比較的色々な業者が買取をしています。
だからこそ、きっちりとしたお店に見てもらいたいですよね。
会社の規模が小さくても誠実に買取を行うところも沢山ありますから、色々なお店をチェックすると良いですよ。
まずは気になるお店のホームページを確認してみましょう。
鑑定書がなくても買取が可能か
まずは鑑定書がなくても買取が可能かをチェックしておきましょう。
買取できるお店であれば「鑑定書なしでも買取ができます」と書かれていることが多いです。
また、買取してくれる鑑定士がどんな人かをホームページに載せているところもありますよ。
鑑定資格を持っているスタッフが見てくれるところもありますし、小さいお店だと経験豊富な社長さんが直接見てくれるようなお店もあります。
ブランド買取をしているか
ダイヤモンドジュエリーの買取の場合、そのジュエリーがブランドの商品であれば素材代(ダイヤモンド・地金代)にプラスしてブランド代を加算してもらえる場合もあります。
買取業者を選ぶ時は売りたいブランドの買取を行っているかも併せて確認してみてくださいね。
査定額の説明、提案をしてくれるか
気になるお店を見つけたらダイヤモンドを持っていき査定を出してもらいます。
この時に気にかけていただきたいポイントは査定額や4Cの説明をしてくれるかどうかです。
査定額は地金の純度、ダイヤモンド、相場、デザイン、ブランド、ジュエリーの状態など様々な要素を加味して判断します。
ですので金額を提示されても「なぜこの金額になったのか」が分かりにくいんですね。
親切なお店であれば金額の内訳を4Cなどとともに分かりやすく教えてくれます。
他にも、良い買取業者はさらに買取価格を上げるにはどうしたら良いかアドバイスをくれます。
例えば、よりダイヤモンドの評価を正確に行うために、査定前に洗浄サービスを提案しているお店もあります。
鑑定書がない場合はダイヤモンドの状態をみて4Cを判断しなければいけないので、使ったままの状態よりも汚れを洗い流し綺麗な状態にしてからの方が良い評価をしてもらいやすくなります。
このような「店側は面倒でもお客様が得する提案」をしてくれるかどうかも、お店選びの重要な判断基準になると思います。
最後に
結論、ダイヤモンドは鑑定書がなくても買取に出すことができます。
しかし、一般的には鑑定書があった方が査定額が高くなる傾向にあります。
また、鑑定・鑑別機関によって価格が変わる場合もあるなど、査定を出すにはしっかりとした専門知識が必要となってきます。
お客様への説明が丁寧なお店や色々な提案をしてくれるお店は安心できる一つの指標になると思います。
お店を選ぶ場合はホームページやチラシなどで鑑定書がなくても買い取ってくれるか、ブランド買取をしているかなどもチェックしてみてくださいね。
もし時間に余裕があれば、いくつかのお店に持って行って査定額を比べてみるのもおすすめです。より高価に買取してくれるお店を選びやすくなりますよ。
カラッツ編集部 監修