最近、素人でもダイヤモンドの本物と偽物を簡単に見分け方がネットやテレビで紹介されていますが、あれは本当なのでしょうか。インターネットの記事だと、こんな方法でダイヤモンドの本物と偽物を1発で見分け方があります、本物のダイヤモンドだとこうなります、偽物のダイヤモンドだとこうなりますと結果が書かれてはいますが、信ぴょう性はいまひとつ。せっかくなので、ダイヤモンドの本物と偽物の見分け方を本当に試してみたら、本物か偽物かの見分け方が正しいかどうかも分かるし、面白いんじゃないかということで、実際に試してみました。
目次
実験内容
今回試してみたのは、黒い線の上に、ダイヤモンドを置いたら、ダイヤモンドは線が見えないけれど、偽物は線が見える、という噂です。これは本物のダイヤモンドの持つ、光の屈折率の高さを利用する方法です。
準備するもの
・紙
・マジック
・ダイヤモンド(ルース)
・比較したい宝石
実験方法
紙に黒い線を引き、線の上に、ダイヤモンドと比較したい宝石を置く
本物のダイヤモンドと、ダイヤモンドの模造石と有名な6つの宝石を比較してみました。
鉱物名 | 屈折率 |
ダイヤモンド | 2.417 |
キュービックジルコニア | 2.16 |
ホワイトサファイア | 1.761-1.770 |
YAG | 1.833 |
GGG | 1.970 |
スピネル | 1.718 |
モアッサナイト | 2.648-2.691 |
ダイヤモンドの本物と偽物を見分ける6回の実験
1回目 キュービックジルコニア
1回目のダイヤモンドの模造石として有名なキュービックジルコニアの実験です。
左がダイヤモンド、右がキュービックジルコニアです。
左のダイヤモンドは線が見えませんが、キュービックジルコニアは線がはっきり見えます。これは分かりやすいので、ダイヤモンドとキュービックジルコニアをこの方法での本物か偽物かの見分け方は簡単です。
キュービックジルコニアは屈折率は2.16、ダイヤモンドの屈折率2.417なのですが、屈折率は0.3違うだけで、このようにかなりの差がでるのです。ちなみにオパールが1.45、コランダムが1.77です。キュービックジルコニアは、インターネットではCZ、CZダイヤ、ジルコンと書かれることがありますので注意してください。
2回目 コランダム(ホワイトサファイア)
2回目の実験はダイヤモンドとホワイトサファイアの実験です。サファイアと言えば、カラーサファイア、とくにブルーが有名ですが、ホワイトサファイアもあります。ダイヤモンドよりも安価なため、ダイヤモンドの代替品として使われることもあります。右がホワイトサファイアです。
右のホワイトサファイアは線がはっきり見えました。ダイヤモンドとホワイトサファイアをこの方法での本物か偽物かの見分け方は簡単です。
サファイアと言えば、カラーサファイア、とくにブルーが有名ですが、ホワイトサファイアもあります。ホワイトサファイアは、ダイヤモンドと比べると輝きが劣るため、石だけを比べても見た目にも分かりやすいです。
3回目 スピネル
3回目の実験はダイヤモンドスピネルの実験です。スピネルは、よく出回っているのはピンクやレッドですが、ホワイトもあります。
右のスピネルは線がはっきり見えました。ダイヤモンドとスピネルをこの方法での本物か偽物かの見分け方は簡単です。ちなみに、ブラックスピネルもあり、こちらはブラックダイヤモンドに間違われることもあります。スピネルの屈折率は1.718です。ブラックダイヤモンドとブラックスピネルの見分け方も今後記事にしていきますね。
4回目 YAG
4回目の実験は、YAG(通称:ヤグ)です。YAGは、見た目がダイヤモンドに似ている人造石ですが、一般的に出回っていないので、あまり知名度は高くないです。もともとはダイヤモンドの模造石として作られましたが、製造コストの低いキュービックジルコニアにとってかわられ、いまは医療用レーザーの材料として使われています。
右のYAGは線がはっきり見えました。ダイヤモンドとYAGをこの方法での本物か偽物かの見分け方は簡単です。
正式名称は「Yttrium Aluminium Garnet(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)」です。その頭文字を取った略称となる「YAG(ヤグ)」が一般的な通称となっています。
5回目 GGG
5回目の実験は、GGG(通称ジージージー、またはスリージーと読みます)です。ダイヤモンドの人造石の一種です。GGGは製造コストが高く、工業用としてもイマイチで、宝石用として転用されましたが、YAGと同様、キュービックジルコニアの台頭により姿を消しました。
右のGGGは線がはっきり見えました。ダイヤモンドとGGGをこの方法での本物か偽物かの見分け方は簡単です。
ちなみにGGGは、比重は最大なので、ダイヤモンドの扱いに慣れているプロだと、手に持っただけで重さで分かります。
鉱物名 | 比重 |
ダイヤモンド | 3.52 |
GGG | 7.05 |
6回目 モアッサナイト
最後の実験は、モアッサナイトです。十数年前に宝石業界を驚かせたダイヤモンド類似石のモアッサナイトです。
これは、難しいです!
右のモアッサナイトは線が見えません!。
モアッサナイト以外は、順調に、見分けられる、が続きましたがモアッサナイトとダイヤモンドの見分け方は、この方法で見分けるのはかなり難しいです。モアッサナイトの屈折率は2.648〜2.691と、ダイヤモンドに近いため線が見えません。
モアッサナイトは、ダイヤモンドの人造石の一種で、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
少しマニアックになりますが、屈折計を調べる屈折計の使い方は、こちらです。
結論
ダイヤモンドの本物と偽物を線を透かしての見分け方を6回の実験の結論ですが、黒い線の上に石を置く方法だと、完璧に見極めるのが難しいです。
また、モアッサナイト以外の既出の石とダイヤモンドは1発で本物か偽物かを見分けられそうですが、この方法が適用されるのは、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドのみです。なぜなら、ラウンドブリリアントカットは、輝きをもっとも引き出すカットで、光を通さないカットになっているため、黒い線が透けて見えないのです。なので、ラウンドブリリアントカット以外のカットや、カットがされてない原石だと、上記のような結果にはなりません。
インターネットに溢れている情報をそのまま鵜呑みにするのは危ないので、一般消費者の方に正しい情報をお伝えするために、今後もダイヤモンドの本物と偽物を見分け方の実験を続けていこうと思います。
カラッツ編集部 監修