ラベンダー色に白色が混じり、美しいマーブル模様を描いた宝石、チャロアイト。
ロシアで発見され1978年に新種として認定された、比較的新しい鉱物です。
「魅惑」という石言葉があるチャロアイトは、どのような宝石なのでしょうか?
今回は、チャロアイトの歴史から性質、名前の由来などを辿ってみました。
チャロアイトとは?
チャロアイトは、ロシアのムルン山脈を流れる「チャロ川」で発見された鉱物です。
当時イルクーツク工科大学の鉱物学者であったヴェーラ・ロゴワ女史の調査から、1978年に鉱物「チャロアイト」として認定されました。
実はチャロアイトは発見当初、別の鉱物、「カミングトナイト(カミントン閃石)」と思われていたそうです。
しかし、この鉱物は他にはない新種だと確信したロゴワ女史が研究を重ね、論文を発表します。
そして新種鉱物として申請した結果、見事チャロアイトとして認可されたということです。
新種のチャロアイトは、発表と同時に世界中で大きな話題になりました。
チャロアイトの性質
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | (K(Ca,Na)2Si4O10(OH,F)·H2O) |
硬度 | 5-5.5 |
比重 | 2.54-2.68 |
屈折率 | 1.55-1.56 |
光沢 | ガラス状、真珠光沢 |
チャロアイトの名前の意味
チャロアイトは英語で「Charoite」と綴ります。
この名前は産地である「チャロ川(charo/chara)」に由来しているとのことですが、一説によると「チャロ(Charo)」とはロシア語で「魅惑する」という意味をもっており、その意味も含んで名付けられたということです。
確かにチャロアイトはその美しい色と独特の模様が魅惑的な宝石であり、何となくそう名付けたくなった気持ちも分かるような気がします。
ちなみに、和名では「チャロ石」と、可愛い響きの名称で呼ばれています。
レアなチャロアイトとは?
チャロアイトの中には、キャッツアイ効果を見せるものもあるといわれています。
結晶内の繊維が直線で並ぶものをカボションカットにすると、キャッツアイ効果(シャトヤンシ)ーを見せるといわれ、大変希少な存在だそうです。
繊維質が粗いほど、猫目もギラリ!と太くなるとか。
チャロアイトの色の種類
チャロアイトは、紫やバイオレット、白、黒などがマーブル模様に混ざり合った、特徴的な発色をしています。
薄紫色はマンガンの不純物を含有することを起因とします。
そしてマーブル模様になるのは、紫色の繊維に別の鉱物が混ざることが理由だと考えられています。混ざる鉱物の違いによってマーブル模様の色も変わるそうです。
では、その鉱物を色別に見てみましょう。
白色…カリ長石(Potassium Feldspar)
淡い黄色…ティナクサイト(Tinaksite)
黄緑色…カナサイト(Canasite)
黒色針状…エジリン(Aegirine)
淡い灰黄色…ステッシーアイト(Steacyite)
チャロアイトの産地と歴史
チャロアイトは、最初に発見されたロシアのムルン山脈にあるチャロ川で産出されています。
前述したとおり、長い間「カミントン閃石」だと信じられており、ロゴワ女史に新鉱物として発表される以前から、ロシア国内では壺などの装飾品に加工されていたそうです。
ロンドンでは鉱物標本業者が大量仕入れをして、販売に乗り出していたとか。
チャロアイトの原石
チャロアイトは変成鉱物の一種です。
古代に形成された結晶岩石や石灰岩の層にアルカリ閃長岩が入り込み、その間の接触帯で生成した鉱物なのです。
原石は一般的に大きく、半透明で紫色~ラベンダー色をしています。
表面はガラス状~真珠光沢を見せます。
色の項目でお伝えした通り、チャロアイトはいくつかの鉱物が混ざり合った結晶の集合体として生成した鉱物です。
そのため、結晶内部が綿密で強い性質をもち、靭性に優れているといわれています。
また硬度が低い方なので加工しやすく、美しい模様を見せることから、彫刻に適しているとされる宝石です。
原石のタイプ
チャロアイトの原石はそれぞれルックスが異なるため、4つのタイプに分類できます。
- 紫色をしており、繊維が粗い。
- 白色が目立つもので、繊維が粗い。
- 前述の2タイプより透明感があり、繊維質が繊細。
- より高い透明感をもち、繊維もほとんど見られない。
チャロアイトの偽物
チャロアイトはロシアのムルン山塊でのみ産出されるといわれている鉱物です。そのため希少価値が高く、偽物も流通しているようです。
プラスチックや別の石を着色した模造石も流通していると聞きますので、購入の際には注意が必要です。
最後に
チャロアイトは、落ち着いた紫色と流れるようなマーブル模様が特徴的な、とても魅力的な宝石です。
靭性には優れていますが、硬度は高い方ではないので、ジュエリーとして着用する際には、取り扱いや保存方法にも注意してくださいね。
カラッツ編集部 監修