皆さんはサンゴ(珊瑚)というとどんなイメージがあるでしょうか?
青い海に白い珊瑚礁、もしくは真っ赤なネックレスが思い浮かぶ方も居るかもしれませんね。
筆者は昔珊瑚礁でできた島に行ったことがあります。
真っ白な海岸には、乾燥して細かく砕かれた一面の珊瑚。海底も細かな珊瑚で埋め尽くされていました。
その島で見た珊瑚や海の中の珊瑚礁と宝石として売られているサンゴとはだいぶイメージが違い、「その違いは何なのか」が長年の疑問でした。
また、「サンゴは生きている」と聞いたことがあり、漠然と植物のようなものかな?と思っていました。
しかし今回いろいろ調べてみた結果、ある生物だということが分かりました。
では3月の誕生石の一つでもある宝石サンゴについて、色々解き明かしてまいりましょう。
珊瑚の正体は虫!?
珊瑚(サンゴ)は珊瑚虫(さんごちゅう)と呼ばれる生物です。虫とつきますが、昆虫などとは姿かたちがだいぶ違うような気がします。
英名は「コーラル」、和名は「珊瑚」。
珊瑚は珊瑚礁と宝石サンゴとに大きく分類されますが、どちらも「珊瑚虫」からできています。
「刺胞動物・花虫類」に分類され、その中の「ポリプ」と言う郡種に分類されます。(イソギンチャクもポリプの仲間です。)
珊瑚の原木の周辺を泳いでいる珊瑚虫が、一定の大きさになり原木に吸着され、成長を続けていきます。幾つかの珊瑚虫が集まって、一つの珊瑚が形成されます。
炭酸カルシウムを分泌することで樹状の骨格をつくるといわれています。
このうちカルサイトでできた硬い骨格を作るものが宝石サンゴであり、骨格が加工され宝石として扱われます。
潮の流れが速ければ速いほど美しい枝を作るといいますから、珊瑚の枝ぶりの美しさは、まさに大自然が生み出した造形美ということですね。
珊瑚礁と宝石サンゴの違い
珊瑚礁と宝石サンゴは、珊瑚虫の口の周囲にある触手の数の違いから分類されています。
珊瑚礁
珊瑚礁をつくる珊瑚虫は触手が6本あることから「六放(ろっぽう)サンゴ」と呼ばれます。
海の浅いところに生息し、成長のスピードは比較的速いです。だから珊瑚礁は海岸近くなどで見られることが多いんですね。
珊瑚礁の古典産地は地中海だといわれています。
海に打ち上げられた珊瑚が次第に乾燥してボロボロになる様を見た古代の人々は、「海底の国に茂っていた木が陸に打ち上げられて硬い石になった」と考えていたという言い伝えもあるようです。
宝石サンゴ
一方宝石サンゴは、触手が8本あり「八放サンゴ」と呼ばれている珊瑚虫によって作られます。
宝石サンゴの成長はとてもゆっくりで、中には1cm大きくなるのになんと約50年もかかる種類さえあるそうです。深さ100m以上もの深海に生息するといわれています。
サンゴは生物なのでいずれも寿命があり、その命を終えると海の砂になるとか。何だかそれも神秘的な海の世界を作っている要素の一つかもしれないですね。
宝石サンゴの歴史
宝石サンゴと人との関わりは、紀元前2万年もの大昔から続いています。
地中海の珊瑚は、貴重な宝石サンゴとして東方に伝えられる過程で、楽器として使われていたこともあるそうです。
時には宝飾品や壁画などの装飾として、時には楽器として、珊瑚は多岐に渡り人々の暮らしに寄り添ってきたのかもしれませんね。
また宝石サンゴの赤い色は、キリスト教では十字架にかけられたキリストの血、ギリシア神話ではメデューサが流した血が海に落ちてできたものだという言い伝えもあり、このような言い伝えから「魔除け」として使われていたこともあるようです。
そんなサンゴが日本に入ってきたのは、仏教伝来と同時だといわれています。
産地
日本、地中海沿岸、アフリカ、東シナ海、台湾 など
宝石サンゴの種類
宝石サンゴの中で代表的な5種類をご紹介しましょう。
赤サンゴ
赤サンゴの主な産地は日本です。特に高知県室戸岬沖のものが有名で、その色合いの美しさと品質の良さから海外でも人気があります。中でも赤色の濃いものは血赤サンゴと呼ばれ最高級品として取り扱われます。
現在では採取量が少なくなり、希少価値が上がったためますます人気は高まっていくといわれています。
地中海サンゴ(紅サンゴ)
イタリアのサルジニア島近海に生息している種類で、「サルジ」や「胡渡り」とも呼ばれています。
色は赤サンゴに似て大変美しく、人気もあります。赤黒いものほど価値高く取り扱われます。
桃色サンゴ
色は淡い桃色からオレンジ色や赤に近い色まで幅広くあり、日本近海の広い範囲に生息しているといわれています。
有名なのは高知県沖で採れる桃色サンゴで、彫刻細工に使われることでも知られています。
また、桃色サンゴの一種で、ボケサンゴと呼ばれる、原木が淡いピンク色をしたサンゴもあります。現在ではほとんど採取されない、「幻のサンゴ」といわれているような種類です。
深海サンゴ
白やピンクの地色の中に赤い模様が入ったものなどがあり、個性的で珍しいサンゴです。東シナ海、ハワイ沖の深海で採取されます。
白サンゴ
白サンゴは、南シナ海から日本近海の広い範囲に生息しているといわれています。純白や象牙色の白サンゴは希少価値が高く、高値で取引されています。
お手入れ方法
生物がつくった有機質の宝石であるサンゴは硬度が低いため傷がつきやすい宝石です。
炭酸カルシウムでできているため、酸に溶けやすいという性質があり、汗や化粧品などがついたまま放置してしまうと白く変色したり艶がなくなったりしてしまう恐れがありますので注意しましょう。
水洗いはしても問題ありませんが、水分を拭き取った上で数時間自然乾燥させるなどしっかりと水分を飛ばしてから保管するようにしましょう。
また熱にも弱いといわれていますので、暖房器具のそばに置いたり、乾かすためにドライヤーを使ったりするのもNGです。
身に着けたあとは必ず柔らかい布などで乾拭きして、密封できるビニール袋などに入れて他の宝石と接触しないように保管することをおすすめします。
また乾燥にも弱いといわれていますので、乾燥剤と一緒に保管しないように気をつけてください。
最後に
海底で長い時間をかけて作られる宝石サンゴ。とても神秘的ですね。
長年の疑問も解決し、知らなかった珊瑚について、詳しく知ることができました。
♪桃色サンゴが手を振って、ぼくの泳ぎを眺めていたよ~。
なんて、ふと「およげたいやきくん」の歌詞を思い浮かべた筆者。桃色サンゴの生息地は海底300~500mということですから、たいやきくん、どれだけ深海を泳いできたのでしょうね(笑)
今回は色んな角度から宝石サンゴに迫ってみました。少しでも興味を持っていただいた方が居たら嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか