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バルセロナの空を舞うカモメ、そびえ立つガウディー未完のマスターピース、サグラダファミリアを追い越して、やってきましたダリの故郷フィゲラス。
シュールレアリスムの巨匠ダリ。
彼の作品に度肝を抜かれる方も多いと思いますが、実はジュエラーとしても高い評価を受けているということは、あまり知られていないと思います。
そこで今回は皆さんに、ダリのジュエリーの本質、その前衛的なアプローチを知って頂ければと思い、カタルーニャ州ジローナ県にあるフィゲラスのダリ劇場美術館、宝石美術館に行ってきました!
目次
バルセロナはフィゲラスの、ダリ劇場美術館&宝石美術館に行ってきた!
遠かった……。
私が住むアラゴン州サラゴサからカタルーニャの田舎町フィゲラスまで、往復10時間の弾丸日帰り旅行。
ダリの故郷はスペインカタルーニャ州の州都バルセロナから、電車で約1時間弱のフィゲラスという町です。
彼が生まれ、そして荼毘に付した町フィゲラスは、彼の生きた軌跡と素晴らしいインスピレーションに溢れたダリ劇場美術館と宝石美術館で経済が回っている町といっても過言ではありません。
フラフラになる日帰り旅行をしても、見てよかった!と思える最高傑作を、そのココロを、脳裏に焼き付けてきたのでここでは前編(ダリ劇場美術館)、後編(ダリ宝石美術館)に分けて、ダリの人生と作品を皆さんと共有できればと思います!
ダリ劇場美術館とは?
あまりに見どころが沢山ありすぎるので、今回はダリ劇場美術館にしぼってお話したいと思います。
まずこのダリ劇場美術館は1974年に開館した、美術館でありながらダリ最大規模の作品の一つです。
実はこの美術館、元々19世紀に建てられたフィゲラスの劇場だったのですが、内戦後に破壊されたものを、後にダリが美術館として蘇らせたそうです。
そしてココには、彼の最初期の特徴である印象派、未来派、そしてキュピズムを垣間見ることができる作品から、シュールレアリスムの傑作まで、幅広い作品が展示公開されています。
(絵画、描写、ジュエリー、彫刻作品から、エル・グレコにダウなどのダリの絵画コレクションまで展示)
そのためか交通の便が悪い立地でありながら、日時を問わず国内外から観光客が集まり、謂わばダリの聖地ともいうべき美術館であるように思います。(日本人観光客も少なくありませんでした。)
そもそもダリってジュエリーを作っていたの?
ダリ劇場美術館に訪れると一目瞭然、彼が単なる画家であったという固定概念は一瞬にして崩れ去ることでしょう。
併設の宝石美術館は勿論のこと、ダリ劇場美術館に所蔵されている佳作のジュエリー、金属工芸群を見ただけでも、ダリが宝飾業界でも驚くべき存在感を放つ巨匠として君臨していたであろうことは容易に想像できます。
ちなみに、ダリがジュエリーを制作するようになるのは、1941年から1970年までの間。
ダリはサンフェルナンド王立芸術学校でアートの手ほどきを受けましたが、実際彼がジュエリー制作に携わったのはデザイン画がメインでした。
ルネサンスの時代に生きた彫金師たちが紡ぐような、豪奢の宝石を散りばめた独創的なデザイン画は、どこか幻を見ているかのような錯覚に陥るダリマジックが炸裂。
これらのダリが書き上げた二次元のデザイン画には、使用する宝石、カット、カラーが詳細に指定され、そのデザイン画からアルゼンチン人ジュエラーのカルロス・アレマニーが、ニューヨークにある彼の工房でジュエリー作品へと仕上げていきました。
ダリが残したジュエリー作品の中でも、El ojo del tiempo (1949)、 El corazón real (1953) 、El elefante del espacio (1961)などは、彼の絵画作品の中にも描かれており、ダリを象徴する作品として広く知られています。
感性を磨くにはもってこい!ダリ劇場美術館のイチオシ作品
ここではダリジュエリーをご紹介する前に、まずは彼の卓越した画力、センスを感じる絵画、デザイン画に金属オブジェなどの見どころからご紹介していきたいと思います。
ダリの画風にショック!こんな絵が上手かったっけ?
溶け出した懐中時計に代表される彼の摩訶不思議なシュールレアリスムの世界。しかしこちらの絵画を見ていただければわかる通り、彼の卓越したテクニックはまるでオランダ絵画の巨匠フェルメールの作品のよう。
個人的にはダリ最愛のガラが着こなすセーラー服にばかり目がいってしまいますが……。
代わってこちらの作品は「あぁ、これがモダンアートだね!」と言える安定の作品です。
しかしダリ劇場美術館では、「えっ、ダリってこんな絵が上手かったの?」と思わず言ってしまいそうな作品たちがズラリと並んでいました(笑)
オールドマスターの静物画とシュールレアリスムが融合するとこんな作品が生まれます。
こんな構図から素敵なジュエリーデザインが浮かんできそう!
愛するガラの肖像、未完なのか、これで完成形なのかはわかりません。
彫金技術が光る!ダリのオブジェが唸るほど愛おしい!
やっぱりすごいですねぇ、これが街角のセレクトショップにあったら、思わず衝動買いしてしまいそうなダリオブジェ。
ザックリ感半端ない神々しいゴリアテの首を持つダビデ像、下部には磔刑像。
なお、こちらの劇場美術館、所蔵されている作品全てがダリ作というわけではなく、ダリ財団が所蔵する他作家の作品もかなりの数が含まれています。
こちらの作品なども、ダリに負けず劣らずの存在感を放っています。
女優メイ・ウエストのお部屋
正直言ってダリの世界観を限られた文字数で、しかも拙い私の語彙力で伝えるのは至難の業。
というわけで、ダリジュエリー紹介前のクライマックス作品として、こちらのメイ・ウエスト女史のお部屋を紹介したいと思います。
広々としたアパートメント内部にある階段を上り、ルーペを通して真っ赤なルージュのソファーを眺めると……!あぁ、そういうことね!やっぱ天才は違うわ……と思うはず。
待ってました!劇場美術館内で鑑賞可能なダリジュエリーを厳選紹介
ダリの宝飾品といえばダリ宝石美術館ですが、規模は小さいもののゴールドを基調としたジュエリーをダリ劇場美術館でも鑑賞可能なんです!
30点にも満たないコレクションではありますが、その中のいくつかをご紹介したいと思います。
やっぱり、天才は何を作らせてもセンスがあるますね。
Caduceuシリーズ
Caduceu?なんじゃそりゃ、と思う方に簡単に説明すると、ギリシャ神話に登場する蛇が巻き付いたあの有名な杖のことです。
特に医学や平和のシンボルとして有名ですが、ダリはこの神聖なモチーフをブロンズ、シルバー、ゴールドで仕上げ、作品に残しています。
いやあ、どれもシックで味わい深く、一家に1つ、玄関先に飾りたくなるような、ダリの金属工芸の裏ボス的な作品です。
Isis porte portrait
北向きに配置すれば、気の流れが良くなりそうな風水臭がプンプンするこの子。
愛するガラの笑顔がまぶしい、私の一番のお気に入りです。
気になる題材は、エジプト神話のイシス神で、トビのような外見を持つ女神さまだそうな……。
イシス神と上部のフルールドリスの化学反応が、またまたいい味を出しています。
Tortue porte Dali Bonheur
石の上にも3年という諺がありますが、ダリはカメの上にキャストしたゴールドコインを乗せてみました。
こちらも上記のイシス神と同様に、開運アップに繋がりそうなアメジストが使用されています。
これがミュージアムショップにあれば、危うくカードを切ってしまいそうになりますが、残念ながらお土産用のレプリカは販売されていないようです。
それにしても手が届きそうで届かないその値段設定、旅行費用に飛行機代を考えれば、清水とは行かないまでも、それなりに覚悟がいるプライスばかり……。
dali fleiur
こちらのタンポポの綿毛もしくは、ケセランパサラン(知っている人いますよね!)のようなゴールドオブジェもKAWAIIと女性に人気の作品。
下部の植木鉢はメノウでしょうか?
soleil glorieux
難解なネーミングの作品が続きますが、ここで神々しい太陽を模したグロリアスなオブジェの登場です。
キリストの磔刑を思わせる十字架にも見え、パンキッシュなダリの金属工芸の中では好き嫌いが別れそうな作品かもしれません。(私は好きです!)
Serpent magique
大きな蛇を模ったペンダント。
Serpentとは、蛇や蛇座以外にも、誘惑する悪魔といった意味もあり、ダリがどんなマジカルな意味を込めて制作したのかを考えるだけで浪漫が広がるよう。
蛇に巻き込まれるように、男女の肖像が刻まれたコインがやはりダリらしく、たった5センチ程度のミニマム作品と言えど、確かな存在感を見せる秀作と言えますね。
これなら気兼ねなくデイリーユースできてしまいそう!
mirroir
キャストしたコインと18カラットのミラー。こんな豪奢な手鏡で、ファンデを塗ったなら、気分はエキセントリック!といった感じでしょうね。
さてココまで独断と偏見で、特にダリらしいと思えるダリジュエリーの数々をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
なお、ダリ劇場美術館、宝石美術館の作品は、世界のミュージアムへ貸し出しをしているため、季節に応じて展示内容が異なるそうです。
まとめ
今回はダリってジュエリーを作らせてもすごいんです!という目線で、ダリ劇場美術館をご紹介してみました。
ダリ劇場美術館は、ジュエリーや金属工芸作品自体の収蔵数こそ少ないものの、ダリらしいアート作品を十二分に楽しめる場所でした。
なので、ジュエリーや鉱石ラブの皆様にもぜひフィゲラスまで足を運んで、その目で素晴らしい作品たちを見てもらえたら嬉しく思います。
因みに上図はだまし絵なんです、あなたの目にはどんな風に映りましたか?
カラッツ編集部 監修