宝石の王様 アレキサンドライト|変色する理由、産地、硬度やお手入れ方法など!

アレキサンドライト

昼と夜で色が変わるアレキサンドライト。

アレキサンドライトは自然光下の光では緑色、夜の蛍光灯やロウソクの光では赤紫色に変わる宝石です。

全く違う、2色の綺麗な色を放つミステリアスなカラー変化と希少性から、アレキサンドライトは収集家の方が多い石ともいわれています。

本記事ではそのアレキサンドライトの変色の理由や、アレキサンドライトの基礎情報をお届けします。

宝石の王様「アレキサンドライト」

アレキサンドライト

昼と夜で色が変わるアレキサンドライト。

アレキサンドライトは発見されてから二世紀のときが経過しただけという、宝石の世界では新参者といえる宝石ではありますが「宝石の王様」という称号で呼ばれています。

筆者はこれまでアレキサンドライトの売買に数千石以上関わってきました。アレキサンドライトの1つの大きな特徴は、「アレキサンドライトを収集後に”売る”という方が滅多にいらっしゃらない」ことです。

アレキサンドライト収集家は、より新しい、変色の美しいアレキサンドライトを求めてコレクションを増やしていく印象があります。つまりは、一度手にすると次から次へと欲しくなってしまう宝石なのだということです。

魔力的な魅力があるということですね。

アレキサンドライトが変色する理由

アレキサンドライト

アレキサンドライトは太陽のようにバランスの良い自然光下では緑に見え、赤色の成分が多い白熱光下では赤紫に見えますが、この色の変化は成分であるクロムのバランスによるものです。

クロムはコランダムではルビーの赤色を、ベリルではエメラルドの緑色を、それぞれ出す性質をもともと帯びています。

アレキサンドライトは、このクロムが赤と緑の2色の中間的な色のバランスで入り込んでいることが特徴で、そのため、光の種類によっていずれかの特徴が強く出るという変色性がアレキサンドライトに与えられているのです。

アレキサンドライトは大変希少な宝石ですが、特にこのクロムのバランスが良く、色の変化が顕著で、さらに内包物が無いものとなると、市場価値も非常に高く1カラットサイズでも100万円以上する場合も多々あります。

アレキサンドライトの産地と由来

アレキサンドライト

アレキサンドライトはクリソベルという鉱物で、クリソベリルはベリリウムとアルミウムとの酸化鉱物です。

ちょっと難しくなってきましたがしばらくお付き合いを。

ギリシャ語でchrysoは「金」を意味し、berylは「緑」を意味します。通常、透明クリソベリルは多くの場合、色は黄色、黄色がかった緑、または茶色です。 うまくカットされると、魅力的で手ごろな値段で、鮮やかで丈夫な宝石になります。

人気があるのは、 輝くような黄色、緑、時々オレンジ色の石です。色が茶色になるほど、クリソベリルの価値は低くなる傾向にあります。クリソベリルの中で有名な宝石のタイプはクリソベルキャッツアイとアレキサンドライトになります。

アレキサンドライトの話に戻ります。

アレキサンドライトの主な産地は、Sri Lanka、India、Tanzania、Russia、Madagascar、Brazilです。アレキサンドライトが最初に発見されたのはRussiaのウラル山脈のエメラルド鉱山であったといわれています。なおアレキサンドライトは2019年からGIAで産地鑑別ができるようになった石です。

1830年に初めてアレキサンドライトが発見されたときはエメラルドかと思われていたそうですが、昼の光のもとでの色と、持ち帰った後の夜の光の下での色が違ったため、珍しい希少価値のある石ということで、当時の皇帝だったニコライ1世に献上されました。

アレキサンドライトが発見された日は、ロシア皇帝アレクサンドルⅡ世12歳の誕生でした。

鉱夫たちは敬愛する皇帝を祝う気持ちから、宝石をアレキサンドライトとと名付けられたといわれています。未来の皇帝の名に恥じぬ価値のある宝石であるという確信があったからこそ命名したと言われています。

アレキサンドライトは、こういった背景から、ロシアでは、「宝石の王様」とも呼ばれているそうです。

アレキサンドライトの産地の中で、産出量が多いと言われているのがブラジルです。小粒ですが、石の変色がよいものがよく取れると言われています。また、石の質がよいのはロシアで石の変色が美しく、石の大きさも比較的大きめのものが採れると言われています。

アレキサンドライトが最初に採掘されたロシアのウラル山脈は、現在ではほとんど産出はないため、ロシア産アレキサンドライトは価値が高くなっています。代わって、世界のアレキサンドライト産出の中心となってきたのがブラジル産です。約8万平方キロという鉱山としては比較的小規模な鉱山にも関わらず、現在では全産出量の大部分を生み出すブラジルのイマティタ鉱山です。

アレキサンドライトの硬度

アレキサンドライト

アレキサンドライトのモース硬度は8.5で、トパーズ、ルビー、サファイアとだいたい同じぐらいです。

色が変わるので、何となくデリケートな石という印象があるかもしれませんが、ひっかき傷には比較的強い石だといえます。そのため、毎日身につける指輪やジュエリーにセットする選択肢としても適した石となります。

一般に「貴石」と呼ばれるのは、硬度の高いダイヤモンド・サファイア・ルビー ・エメラルド・アレキサンドライトです。「7.5」以下は「半貴石」と呼ばれています。

  • ダイヤモンド 「10」
  • コランダム(サファイアとルビー)「9」
  • アレキサンドライト /キャッツアイ 「8.5」
  • エメラルド /トパーズ 「8」
  • アクアマリン 「7.5~8」
  • トルマリン /ガーネット /シトリン 「6.5~7.5」
  • 翡翠 「7」
  • アメシスト 「6.5~7」
  • ペリドット 「6.5」
  • ムーンストーン /オパール 「6」
  • 真珠 「3.5」
  • 琥珀 「2」

この区分で言ってもアレキサンドライトは「貴石」となります。

誕生石としてのアレキサンドライト

アレキサンドライトは6月の誕生石です。

石言葉は、

  • 秘めた思い
  • 魅力
  • 高貴

などです。

宝石の皇帝」とうたわれたことや、色が変わる二面性にぴったりの石言葉かなと思います。

昼と夜とで違う光との関係から、異なる表情を見せる変色効果を持ちます。2つの顔を持つ魅惑の宝石として、「昼のエメラルド」「夜のルビー」といわれています。

クリソベリルは自分を高めるために努力する人を支援し、自分自身が既に「特別な何か」を有していることを気づかせてくれると言われています。また獅子座の星座石です。

アレキサンドライトの鉱物名

アレキサンドライト

アレキサンドライトは鉱物名はクリソベリルです。

クリソベリルと一口に言っても、

  • クリソベリル
  • クリソベリルキャッツアイ
  • アレキサンドライト
  • アレキサンドライトキャッツアイ

と4つの種類に分けられます。

つまりアレキサンドライトは、クリソベリルという鉱物的な要素だけで決まるのではなく、あくまで「光に当てた際に変色する」という変色性があってはじめてアレキサンドライトと認められるということです。

アレキサンドライトは、普段は青紫色や深緑色っぽい色合いですが、光をあてると赤紫色のような赤色がかった色になります。蛍光灯かペンライトかという光源によっても色合いがクルクルと変わります。

クリソベリルの中でも飛び抜けて希少性が高く、美しい石と言えます。

アレキサンドライトを購入する時の注意

実際、ブラックライトで無理やり変色させたものをアレキサンドライトだと謳うような悪質なお店はかなり存在するようで、「騙されていました😱」というお声もTwitter上で複数頂戴しました。

皆さま、何はともあれ素敵なアレキサンドライトライフを!

カラッツ編集部 監修

ABOUT US

ジュエリー業界に数年従事。その後別業種に転職しながら、ジュエリー好きが高じて、宝石に関する記事執筆やコンサルティング業務も行う。年に数回海外旅行に行った際には、現地のジュエリーショップや博物館をチェックするのが楽しみ。好きな宝石はカラーダイヤモンド。