画像:アントヒルガーネット
濃く赤い色合いが特徴的なパイロープガーネット。
同じ赤系ガーネットである、アルマンディンよりシックで落ち着いた雰囲気をもちます。
今回はそんなガーネットの中でも赤色が美しいパイロープガーネットをご紹介したいと思います!
目次
パイロープガーネットとは?
少し落ち着いたシックの色合いの中にも華やかさを感じるパイロープガーネット。
赤い石という印象深いガーネットですが、実は単体の宝石名ではなく同系統の鉱物のグループ名であることから、色も種類も豊富です。
大きく、アルミニウムガーネットとカルシウムガーネットの2つに分けられ、パイロープガーネットはアルミニウムガーネットに属します。
宝石として主に出回っているのは、パイロープと同じアルミニウムガーネットに属す、アルマンディン、スペサルティンとカルシウムガーネットに属すグロッシュラー、アンドラダイト、ウバロバイトの計6種類といわれています。
この他、上記の種類を端成分とし、複数の端成分が混ざりあった固溶体とよばれる種類もあります。
アルミニウムガーネットに属するパイロープガーネットは、マグネシウムとアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物です。
濃く赤い色が特徴的で、チェコのボヘミア地方が主産地の一つであることから、ボヘミアンガーネットと呼ばれることもあるそうです。
アルミニウムガーネットの中では、最も産出量が少ないといわれています。
2ctを超える大粒のものはほとんどなく、多くは小粒で産出されることから、装飾品に利用される際にはビーズやパヴェなどにして仕立てられることも多いそうです。
鉱物としての基本情報
英名 | Pyrope Garnet(パイロープガーネット) |
和名 | 苦礬柘榴石(くばんざくろいし) |
鉱物名 | ガーネット |
分類 | ケイ酸塩鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Mg3Al2(SiO4)3 |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 3.6 – 3.75 |
屈折率 | 1.73 – 1.74 |
パイロープガーネットの色
パイロープガーネットの赤色は、主に鉄、クロムの影響によるもので、成分比によって色が変わると考えられています。
主な色は、帯紫赤、赤、オレンジレッド、ローズレッド、ピンクなど。
産出される殆どのパイロープガーネットは赤系の色合いをしているといわれていますが、それは単にアルマンディンガーネットと常に混ざり合っているからで、パイロープガーネットの本来の色はカラーレスのようです。
実際イタリアから僅かにピンク色を帯びる程度のカラーレスに近いものが見つかることもあるそうですよ。
またクロムを含むパイロープガーネットの場合、光源を変えると色が変わって見えるカラーチェンジ効果が見られるものもあるそうです。
産地
チェコ、ノルウェー、アメリカ、タンザニア、南アフリカ、オーストラリア、イタリア、ブラジルなど。
原石の形
ざくろの実のような、形の整った12面体や偏菱(へんりょう)24面体、またはその組み合わさった形などで産出されるといわれています。
宝石品質のパイロープガーネットの多くは、河の礫(れき)として見つかりますが、母岩となる他の鉱物に包含される形で産出されることもあるといいます。
高圧鉱物であるパイロープガーネットは変成岩やキンバーライトなどに含まれることが多いそうです。
キンバーライトと言えば、ダイヤモンドが採れることでも知られますね。
ダイヤモンドの中には内包物としてガーネットを含むものもあると聞きます。
もしかしたらパイロープガーネットであることも多いのかもしれませんね!
名前の意味
ギリシャ語で“火”や“炎のような目をした” という意味をもつ「ピロポス/Puropus (Pyropos)」から由来して名付けられたといわれています。※諸説あり
アントヒルガーネット
アントヒルガーネットは、主にアメリカアリゾナ州で産出される、クロムを含んだクロムパイロープガーネットです。
アリが巣を作るために地中にあったこのガーネットを掘り出したことから発見され、「アントヒルガーネット(蟻塚ガーネット)」と名付けられたといわれています。
クロムを含むことにより鮮やかなレッドを呈し、華やかさが増す感じがします。
こんな素敵な宝石を見つけてくれたアリゾナ州の蟻さんたちには心から感謝したいですね!
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パイロープガーネットの固溶体
前述した通り、ガーネットには6つの種類と、それらが均等に混ざり合ったいくつかの固溶体が存在します。
パイロープガーネットの固溶体も存在しますので、順番にご紹介しますね!
ロードライトガーネット
葡萄のようなパープリッシュレッドの色合いが特徴的なロードライトガーネット。
アルマンディンとパイロープが混ざり合って出来た固溶体で、くすみの少ない鮮やかさも魅力の一つです。
「グレープガーネット」や「パープルガーネット」と呼ばれる、パープル系のロードライトガーネットも注目されていますね。
産出量が多く市場にも多く出回っているので、比較的リーズナブルに手にすることができます。
▽カラッツSTOREのロードライトガーネット▽ |
マラヤガーネット
可愛らしいピンク~オレンジが特徴のマラヤガーネット。
パイロープとスペサルティン、または、パイロープ、スペサルティン、アルマンディンが混ざり合って出来た固溶体です。
マラヤの意味合いがあまりよくない、ということからウンバライトとも呼ばれることもあるそうです。
マラヤガーネットの中にはカラーチェンジ効果をもつものもあります。
▽カラッツSTOREのマラヤガーネット▽ |
パイロープガーネットの価値基準と市場価格
画像:アントヒルガーネット
パイロープガーネットは「真紅の薔薇」や「血赤色」と言われる通り、赤の色合いが評価に影響します。
深めのレッドカラーが好まれますが、ブラウンやブラックを帯びた暗い色合いのものよりも、明るく鮮やかな色合いほど評価される傾向にあります。
また、内包物などがなく透明度の高いもの程、評価が上がります。
お伝えしたように、パイロープガーネットは流通量が少なく、あまり市場に出回らない宝石です。
そのためいわゆる市場価格や相場は定まっていません。信頼のおけるショップを見つけ、そこから購入するのが安心かもしれません。
クロムパイロープガーネットの一種である、アントヒルガーネットは時々見かけることがありますが、こちらも流通量は多くありません。
ただ、ガーネットの中では価値高いとされる種類ですので、流通量が多いアルマンディンガーネットなどに比べると全般的に高値が付きやすいです。
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最後に
落ち着いたレッドカラーが魅力のパイロープガーネット。
さまざまな種類が存在するガーネットですが、大人っぽく落ち着いた中にも鮮やかさが見られるレッドカラーがパイロープガーネットの魅力です。
ジュエリーとして楽しむのに十分な硬さがありますので、日常的に活躍してくれる宝石ですよ♪
カラッツ編集部 監修