若草の様にさわやかなライトグリーンの色味が魅力的な宝石ペリドット。
比較的身近にある宝石、親しみ深い宝石でもあるのではないでしょうか。
この記事では、ペリドットの基本的な情報やお手入れ方法、歴史や気になる”隕石との関係”などををご紹介していきたいと思います。
ペリドットってどんな宝石?

宝石名:ペリドット(Peridot)
和名は、橄欖石(かんらんせき)といいます。
橄欖系(かんらんけい)の植物がその名の由来です。
鉱物名はペリドットの特徴でもある、オリーブの実の様な色合いからOlivine(オリビン)と呼ばれています。
橄欖石の中で透明度が高く緑の美しいものが宝石ペリドットとして扱われます。
モース硬度:6.5~7
比重:3.3~3.4
屈折率:1.64-1.69
複屈折を示し、複屈折量が大きいため、カットされたペリドットをテーブル面から見るとファセット稜線が2重に見えます(ダブリング)。
名前の意味
ペリドットの語源については、いくつかの説があります。
Epidoteの異義語とされている説:
Epidote(エピドート)という宝石も、ペリドットと同じ緑色の宝石で、よく混同されていた様です。
アラビア語「faridat」(ファリダット)を語源とする説:
ファリダットは、アラビア語で「宝石」を意味します。
かつてエジプトで多く産出されたペリドット。
この説が最も有力とされています。
主な産地
ペリドットの現在の主な産地は、アメリカ合衆国、パキスタン、中国、オーストラリア、ミャンマー、ノルウェー、シエラレオネなど。
日本国内でも産出されることがあります。
色
黄緑色~緑~茶色の混ざった緑
透明度が高く、緑色のペリドットは価値が高いとされています。
ライトグリーンの明るいペリドットも人気がありますね。
ペリドットの色味と濃さは、含有成分である”鉄分”や”マグネシウム”の量によって決まると考えられています。
鉄分が多いと「緑色」になり、マグネシウムの量が増えると「黄色」が増すとか。
原石と鉱物としての特徴

ペリドットの結晶構造は、斜方晶系に分類されています。
ペリドットの原石である橄欖石は、地球深部の上部マントルを構成する主要鉱物の一つです。
ペリドットは、主にマグネシウムを含むフォルステライト(苦土橄欖石)と主に鉄を含むファヤライト(鉄橄欖石)の固溶体とされ、フォルステライトが多いと黄緑色~緑色に、ファヤライトが多いと黒っぽさが増すといわれています。
宝石として扱われているものはフォレステライト(苦土橄欖石)に近いものが多いとされています。
ペリドットの特徴である黄緑色は微量のニッケルが含まれていることが要因ともいわれているようです。
ペリドットの歴史
かつて古代地中海文明において、エジプトの紅海に浮かぶセントジョンズ島(当時の名はザバルガット島)ではペリドットが多く採掘されていたといわれています。
「太陽の石」と呼ばれ、ファラオや王族の装飾品として愛用されていたとか。
ただその時代その島で採れるペリドットはギリシャ人やローマ人から「トパズソ」(トパーズ)と呼ばれていたようです。
そして、セントジョンズ島で採れたペリドットは、中世、ヨーロッパへも広まっていきました。
十字軍が戦利品として持ち帰った事が由来とされています。
宝石研磨されたペリドットとして世界最大とされているものは、約310カラットのもので、これもセントジョンズ島産だといわれています。
現在、アメリカ合衆国のスミソニアン博物館が所蔵しています。
またドイツのケルン大聖堂に、200カラット以上もある大粒のペリドットが飾られています。
こちらはかつて「エメラルド」と間違われていたという歴史があります。
ペリドットはマグマによって地表に運ばれてくる際に小さく砕けてしまう事がほとんどである為、これらの大粒のペリドットはとても稀少なものだそうです。
ペリドットは何月の誕生石?

ペリドットは8月の誕生石です。
生命力とエネルギーが活発で強いイメージの8月に、ピッタリ合っていますね!
ちなみに、ペリドット以外の8月の誕生石は、スピネル、サードニックスが選ばれています。
石言葉
ペリドットの石言葉は、「夫婦の幸福」。
これは、ペリドットがエジプトからローマへ渡り、王と王妃の愛情を結びつけたという言い伝えからきているとか。
その他には、「平和、安心、幸福」などがあります。
お手入れ方法

ペリドットのお手入れは、研磨剤のついていない柔らかい布でそっと汚れを拭き取ってあげてください。
ひどい汚れが気になる場合は、ぬるま湯をはった洗面器の中で、使わなくなった歯ブラシなどで優しく汚れをこすり落としてあげましょう。
モース硬度が6.5~7と比較的高い方ではありますが、床への落下や硬い物にぶつけるといったアクシデントが起きると表面が傷つく恐れがあります。
特に、誤ってぶつけてしまう機会の多い指輪などは、大きな荷物を運んだり家事をする時などは、取り外した方が無難だと思います。
隕石との関係

それでは気になる隕石との関係についてお話しましょう。
まず、隕石というのは、宇宙空間から地球に落ちてきた物体であり、流れ星の燃え残ったものです。
実はこういった隕石の中にペリドットが含まれている事がよくあるそうです。
1951年にアルゼンチンで発見された石鉄隕石(石と鉄、半々から出来ている隕石)の中に、緑色のつぶつぶが沢山みられました。
これらはまさしく、ペリドットでした。
太陽系の天体の一部だったと推測されています。
宇宙空間から隕石に含まれてやってきたペリドット・・
悠久のロマンを感じさせますよね。
マグマとペリドット

地球上に比較的多くの産地をもつペリドット。
前述したとおり、ペリドットの原石である橄欖石は、地球の地下深い部分「マントル」の中の「上部マントル部分」を構成する主要鉱物の一つです。
そのため、「上部マントル部分」には地表よりも沢山の橄欖石(かんらんせき)が含まれているといわれています。
ハワイのキラウェア火山などから吹き出した、「マグマ」の中にペリドットが多く含まれていたとされる理由もコレで、地下に眠るペリドットが噴火によって地表に吹き出されたという訳ですね。
ちなみにペリドットはハワイでは”太陽神ペレの涙”ともいわれているそうです。
採掘は現在禁止されています。
ダイヤモンドの中にも・・?

著者Niinaは以前、米国:ニューヨークでダイヤモンド鑑定士として毎日200個あまりのダイヤモンドを鑑定する仕事をしていました。
顕微鏡でダイヤモンドをのぞいてみると・・
肉眼では想像もできなかったミクロの世界が広がります。
その中に希に時々、明るい緑の可愛らしい宝石が顔をのぞかせる事がありました。
小さなペリドットです。
指紋が1つ1つ違う様に、ダイヤモンドの中の世界も異なっており、その一つ一つの違いを定められた記号を使って書き出す作業を「プロッティング」といいます。
このプロッティングでは、ダイヤモンドに含まれている黒い炭素も、ペリドットも、同じ色の同じ記号で書くことになっています。
含まれているのが炭素であってもペリドットであっても・・サイズやダイヤモンドに含まれている場所が同じであれば、同じだけダイヤモンドの価値が下がってしまいます。
個人的には正直それが不満でした。。
明るい緑の可愛いらしいペリドットが含まれているのと黒い炭素が含まれているのが同じ。
「いやいや、ジュエリーとして身につけるなら、絶対にペリドット入りダイヤの方が嬉しいでしょう!」
個人的な意見ですが・・
まとめ

比較的身近な宝石でもあるペリドット。
歴史やその成り立ちなどを紐解いていくと、とても興味深い宝石である事が分かりました。
私たちが今立っている地面の底深くに緑色の美しい宝石:ペリドットが煌めいている・・
想像しただけで地球が一層美しく感じられませんか?
私たちが身につけ、愛でる宝石の多くは、地球で採掘されたもの:言い換えると、地球の一部なのです。
宝石を美しいと思い、身につけていたい・・という思いは、単に装飾品として自らを飾り立てたいというだけではなく、「地球の一部、自然の一部を身近に感じたい・・」という思いの表れでもあるのかも知れませんね。
カラッツ編集部 監修