宝石鑑別で1番重要!屈折率を調べる「屈折計」の使い方
さて今回は少しマニアックな話になります。おそらく一般の方は知らなくてもいいことかもしれませんが、こんな話もあるんだなあ程度に思っていただければ幸いです。理科の実験で覚えている方もいると思いますが、光は物体を通り抜ける際にその角度が物体の中で変わります。「光の分散」です。
屈折率
宝石に光を当てると空気中から宝石内部に入った光は折れ曲がってその進路を変えます。その屈折度合いを示す値を屈折率といいます。宝石鑑別における屈折率はとても重要な検査項目です。なにしろ屈折率でこの宝石は何かという事が判別できるからです。ここで重要なのがあくまで何の宝石か判断できるという事です。
例えば赤い石を屈折計で検査しルビーと判断できても、それが天然ルビーなのか合成ルビーなのかはまた別の検査で判断しなければいけません。とはいえ、何の宝石か判断できるのはとても大切な事なので宝石鑑別における屈折計の検査は基本中の基本となります。
宝石名 | 屈折率 |
ダイヤモンド | 2.419 |
ガーネット | 1.70~1.89 |
ルビー、サファイア | 1.76~1.77 |
スピネル | 1.717 |
ペリドット | 1.65~1.69 |
ひすい | 平均1.66 |
トパーズ | 1.62~1.63 |
トルマリン | 1.62 |
エメラルド | 1.57~1.58 |
水晶 | 1.54~1.55 |
オパール | 1.42~1.47 |
屈折率が高いほど、反射する光の量も多くなります。一番高い数値の屈折率は、ダイヤモンドです。ダイヤモンドのラウンドブリリアント・カットは高い屈折率を生かす、最も効果的なカットといえます。 屈折率は鉱物の種類ごとに異なるため、鑑別する上で最も重要な数値です。
屈折計を使った鑑別方法
屈折計の紹介
そしてこちらが実際の屈折計の写真です。
屈折計の真ん中のプリズムに屈折液を垂らし、宝石を屈折計を載せて屈折率を調べます。
屈折液には毒性がありますので取扱いには注意が必要です。
宝石を屈折計に載せる
写真のようにセットしたら実際に屈折率を調べていきます。宝石には単屈折と複屈折の2種類があります。簡単に説明すると単屈折とは屈折計のメモリが動かないもので、逆に複屈折はメモリに変化が見られるものです。単屈折には色の多色性がないのでどの角度から見ても同じ色になりますが、逆に複屈折の宝石は多色性があるという事になるので見る角度によって色合いが異なります。
屈折計の目盛りを確認
宝石鑑定士はこのように屈折率を調べてこれはなんの宝石なのか判断しています。ただ問題もひとつあります。それは枠付きの宝石です。店舗などで販売されている宝石はそのほとんどが指輪やペンダント、ピアスなど枠に留められています。裸石(ルース)の状態だと検査しやすいのですが、当然枠付きの状態での検査も多くあります。それで上手く屈折率を調べられればいいのですが、中にはとてもじゃないが調べられない状態の商品もあります。その場合は一度枠から外してルースの状態で調べるしかありません。しかし手間と時間がかかるため最終手段となっています。余談ですが、私に鑑別のイロハを教えてくれた方によると「屈折は気合でとるんだ!」と色んな思いが込められた名言を仰ってました。
カラッツ編集部 監修