鮮やかなグリーンや淡いイエローグリーンが印象的な宝石、ヒデナイト。
小粒な結晶が多く稀少なことから市場に多く出回らないといわれていますが、それにも関わらず、色合いの美しさや強い多色性などがコレクターからも支持されている宝石の一つです。
実はこのヒデナイト、ピンク色が美しいあのクンツァイトと深い関係にある宝石です。
今回はそんなヒデナイトに、スポットライトを当ててご紹介しますね!
ヒデナイトとは
ヒデナイトは鉱物スポジュメンの一種です。
スポジュメンの中でクロムを含み、イエローグリーン、グリーン、ブルーグリーンなどを発色する宝石がヒデナイトと呼ばれています。
ヒデナイトは、1897年にアメリカで発見されました。
当初新種の鉱物と思われていたようですが、後にスポジュメンの一種だということが判明します。
ヒデナイトには、“見る角度を変えると色が変化して見える” 多色性があり、中には“猫の目のように一条の光の筋が浮かぶ” キャッツアイ効果(シャトヤンシー)が楽しめるものもあります。
大粒で産出されることは少なく、多くは25mm以下の小粒の結晶で採掘されるといわれています。
その稀少性からかコレクターの中でも人気の高い宝石の一つです。
また、“特定の方向に割れやすい” 劈開(へきかい)が二方向に完全にあるので、取り扱いには注意が必要です。
鉱物としての基本情報
英名 | Hiddenite |
和名 | リシア輝石、黝輝石(ゆうきせき) |
成分 | LiAlSi2O6(珪酸塩鉱物) |
結晶系 | 単斜晶系 |
モース硬度 | 6.5-7 |
比重 | 3.0 – 3.2 |
屈折率 | 1.65 – 1.68 |
色
グリーン、ブルーグリーン、イエローグリーンなど
産地
ブラジル、アメリカ、マダガスカル、中国など
名前の意味
発見者である鉱物学者のウイリアム・アール・ヒデン(William Earl Hidden)の名前に由来してヒデナイトと名付けられたといわれています。
鉱物スポジュメンについて
ヒデナイトが属する鉱物スポジュメンは、リチウムとアルミニウムを成分として含むケイ酸塩鉱物で、リシア輝石(リチア輝石)とも呼ばれています。
リチウムを多く含むことから、工業資源としても重宝されており、リチウム電池を始めとした多くの製品に幅広く使われているといいます。
ギリシャ語で「燃えて灰に化す」という意味の「spodumenos(スポジュメノス)」に由来してそう名付けられたそうです。
スポジュメンは一般的に白色や灰色が多いとされますが、結晶構造内にあるアルミニウムが他の原子と置き換わることで色合いが変わるといわれています。
ヒデナイトは、アルミニウムがクロムに置き換わったことで、鮮やかなグリーンからイエローグリーンを発色すると考えられています。
しかし中にはグリーン系の色をしていてもクロムを含まないものもあるとか。
現在は一般的にグリーン系のものは全てヒデナイトと呼ぶ傾向が強いようですが、この先定義が変わる可能性ももしかしたらあるのかもしれませんね。
では、色によって名前が変わるヒデナイトの仲間について、順番に紹介していきたいと思います。
スポジュメンといわれてもピンとこない方でも宝石名を聞いたら知っている!というものもあるかもしれません。
では早速いってみましょう!
クンツァイト
アルミニウムがマンガンに置き換わるとピンク、パープル、ライラックなどの色を発色します。
そしてその色のスポジュメンはクンツァイトと呼ばれています。
クンツァイトの方が少し知名度が高いかもしれませんね。
ヒデナイトは小粒の結晶が多いといわれていますが、クンツァイトは大粒の結晶も多く産出されるといいます。
クンツァイトには、“太陽の光に当てた後、暗い部屋へ持ち込むとキラキラと輝く”「燐光性」という特徴があります。
また紫外線に当てると退色してしまうという特徴もあり、保管するときは太陽光に当たらないよう注意が必要です。
実はこの退色性、ヒデナイトにもあるといわれています。
しかしヒデナイトの場合、クロムが起因しているものは比較的色が安定しているという説もあり、全てではないのかもしれません。
とはいえ、後からでは取り返しがつかない場合もあるので、念のため注意をしておいた方が安心かもしれませんね。
そしてヒデナイトと同様に、クンツァイトにも“見る角度を変えると色の濃淡が楽しめる”「多色性」と劈開が二方向に完全にあります。
※クンツァイトのことをもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
トリフェーン
イエローカラーやゴールドを発色するスポジュメンをトリフェーンと呼びます。
こちらは鉄が発色要因ではないかと考えられています。
一般的にはイエロー系が有名ですが、クンツァイトやヒデナイトに属さない色合いのスポジュメンをトリフェーンとして扱うこともあるそうです。
イエロークンツァイトやイエロースポジュメンと呼ばれることもあると聞きます。
ヒデナイト、クンツァイト、トリフェーンの中で一番最初に発見された宝石だといわれています。
トリフェーンも強い多色性をもち、3色が見えることから、ギリシャ語で“3通りの顔”を意味する言葉に由来してそう名付けられたといわれています。
こちらも二方向に完全の劈開を持ち、割れやすい宝石として扱われています。
ヒデナイトの原石の形
ヒデナイトは通常ペグマタイトの中に生成するといわれています。
結晶の成長方向に並んで進むようにして表面に多数の「条線」が見られるのが特徴です。
柱状や塊状で産出されることが多いそうです。
ヒデナイトの価値
緑色が美しく、多色性がはっきり見えるほど価値高く扱われます。
前述したとおり、小さい結晶で見つかることが多い上にカットが難しいため稀少性も高く市場に出回ることが少ないといわれている宝石です。
カットやカラーが美しいものは高額で取引されることもあるようです。
最後に
ヒデナイトは、エメラルドと共生していたことから、「リチアエメラルド」と呼ばれていたこともあるそうです。
美しいグリーンカラーを見るとそれも納得ですね!
濃厚な色合いでクンツァイトのような大粒のヒデナイトは殆ど産出されないといわれています。
小粒でもとても存在感のある美しい色合いですので、機会があれば是非お手に取ってみてくださいね!
カラッツ編集部 監修