2018年末にアフリカで発見されたといわれるコバルトガーナイト。
それまでガーナイトは暗いグリーンのものが多く、色味の渋い宝石という印象であまり目立っていませんでした。
そこに色鮮やかなコバルトブルーに輝くガーナイトが発見されたというニュースが世界中を駆け巡り、話題となりました。
2018年だなんて、つい最近の話ではないですか!
私たちもコバルトガーナイトの歴史の目撃者ということになりますね~。
そして、コバルトガーナイトにとても似ているガーノスピネルという宝石もあります。
何となく名前が似ている感じもしますね、どんな違いがあるのか気になります。
話題のコバルトガーナイトの産地や特徴、ガーノスピネルとの違いなどについて解説しましょう。
目次
ガーナイトとは?
コバルトガーナイトについて知るために、まずはガーナイトについて調べてみました。
ガーナイトは、スピネルグループの一種です。
スピネルといえば、昔から採掘されていた歴史ある宝石の一つです。
長らくルビーだと思われていたレッドスピネルをあしらった王室ジュエリーが幾つかあることも有名な話ではないでしょうか。
宝石名として知れ渡っているスピネルですが、実は、同じ結晶構造をもつ金属酸化鉱物のグループ名でもあるのですよ。
そしてガーナイトもそのグループに属する鉱物の一つ。
ではスピネルグループのメンバーである、ガーナイトについて掘り下げてみましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Gahnite(ガーナイト) |
和名 | 亜鉛尖晶石、亜鉛スピネル |
鉱物名 | スピネル |
分類 | 酸化鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | ZnAl2O4 |
モース硬度 | 7.5 – 8.0 |
比重 | 4.4 – 4.6 |
屈折率 | 1.80 |
光沢 | ガラス光沢 |
ガーナイトの特徴
前述したとおり、スピネルは一つの宝石名を表すだけでなく、同じ結晶構造をもつ金属酸化鉱物のグループ名でもあります。
主に宝石スピネルとして市場に出回っているものは、マグネシウムとアルミニウムを主成分とする種類です。
ガーナイトは、マグネシウムの代わりに亜鉛が入っています。
化学組成を見てみると、
スピネル・・・MgAl2O4
ガーナイト・・ZnAl2O4
です。
マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)が置き換わっているのが分かりますよね。
ガーナイトは、通常のスピネルより色の幅が狭くて色味が渋い、という特徴もあります。
ガーナイトの色
ガーナイトの色は、主にダークグリーン、ダークブルー、グレー、ブラック、褐色など、ダークな色合いのものが多いといわれています。
レッド、ピンク、ブルーなど一般的なスピネルに見られるような華やかな色合いのものは、近年まで見つかっていなかったそうです。
ところが最近になって、鮮やかなコバルトブルーを発色するガーナイトが発見されたことで、注目を浴びたということです!
ガーナイトの産地
ガーナイトの産地は世界各地に散らばっています。
ガーナイトの良質な標本は、アメリカ、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、スウェーデン、フィンランドなどで出ているようです。
他に、カナダやニュージーランド、スリランカなどでも産出しています。
コバルトガーナイトは、先ほども述べた通り、2018年にアフリカのナイジェリアで発見されました。
まだ見つかっていないだけで、鮮やかな色合いをもつガーナイトがどこかの国の地下に眠っているかもしれませんね~。
アフリカなど、今後調査が進むにつれて、続々と新しい宝石や新しい鉱脈が見つかるのではないかと期待してしまいますよね!
ガーナイトの原石の形
ガーナイトの原石の形は八面体の結晶です。
八面体とは、2つのピラミッドの底面同士をくっつけたような形です。
これは、スピネルグループの典型的な形ともいえるのだそうですよ。
塊状や粒状でも産出されることもあるそうです。
ガーナイトは、結晶性片岩やリチウムが豊富な花崗岩ペグマタイト、片麻岩などの変成岩、変性作用を受けた石灰岩などの中で育ちます。
大理石や石英などの高温の交代鉱床にも見られるのだそう。
リチウムペグマタイトの中では、透明で宝石品質のガーナイトが育ちやすいのだとか。
変性度の低いボーキサイトや、砂鉱床でも産出されています。
ガーナイトは風化に強いため、母岩から外れたものが川底に集まるのだそうですよ。
ガーナイトが産出されている国の川に行って、底にある小石を集めたくなってしまいますね~。
名前の意味
一瞬ガーネットと見間違えてしまうガーナイトですが、この名前にはどのような由来があるのでしょうか。
ガーナイトは人物名が由来となっています。
スウェーデンの科学者ヨハン・ゴットリーブ・ガーン氏にちなんで、1807年にガーナイトという名前がつけられました。
ガーン氏は鉱物学者としても有名で、マンガンを発見した方なのだそうですよ。
ガーナイトにはマンガンは含まれていませんし、ガーン氏とガーナイトの関係がはっきりわかる文献にはまだ辿り着いていないのですが、何かつながりがあるのかもしれませんね。
コバルトガーナイトについて
ガーナイトの基本情報が分かったところで、今回のテーマであるコバルトガーナイトについてもお話していきましょう!
地味な存在だったガーナイトを一躍有名にしたコバルトガーナイトは、宝石界のニューフェイスという注目の存在です。
鮮やかなコバルトブルーの色合いが美しくいつまでも見飽きない感じです。
同じスピネルグループのブルースピネルにも似た輝きですよね。
コバルトガーナイトの深い海のようなブルーは、コバルトと鉄によって作られています。
コバルトガーナイトには液体や二相インクルージョン、オレンジの結晶インクルージョンなどが見られることがあるようです。
コバルトガーナイトが発見されたナイジェリアの同じ鉱山からは、コバルトの含有量が少ない、暗いブルーのガーナイトも産出されたそうですよ。
その近くの鉱山からは、カラーレスに近い薄い色のガーナイトも見つかったとか。
ちょっとした環境の違いでコバルトの含有量が変わり、色が変化しているのですね。
ガーノスピネルについて
それでは、冒頭でチラッとお話した、コバルトガーナイトとよく似た外見をもつガーノスピネルについてもお話していきましょう。
前述したとおり、スピネルはグループ名でもあり、スピネルグループには多くの鉱物が属します。
大きくアルミニウムスピネル系列、クロムスピネル系列、鉄スピネル系列の3つに分けられるといいます。
一般的に宝石のスピネルとして流通しているマグネシウムとアルミニウムを主成分としている種類の他、ヘルシナイト、フランクリナイト、マグネタイト、クロマイトや今回のテーマであるガーナイトなどがあります。
そしてスピネルは同一系列内で成分が混ざり合う、つまり固溶することもあるそうで、ガーノスピネルはガーナイトとスピネルの成分が混ざり合って出来た2つの固溶体にあたる鉱物です。
ガーノスピネルは暗くて彩度の低いブルーのものが多いそうですが、中にはコバルトの含有量が高く、鮮やかなブルーの色合いを呈すものもあるそうですよ。
コバルトブルーのガーノスピネルはコバルトガーノスピネルと呼ぶそうです。
スピネルとガーナイトが固溶して誕生したのがガーノスピネル。
ということは、コバルトガーナイトとコバルトガーノスピネルの関係は、いわば親子のような関係といえるのでしょうか。
コバルトガーナイトの価値基準と市場価格
コバルトガーナイト、調べていると増々欲しくなってしまいました。
ぜひ手に入れて、その美しいブルーをこの目で確かめてみたい・・・。
コバルトガーナイトの価値基準や市場価格、買える場所などを調べてみましょう。
コバルトガーナイトの価値基準
コバルトガーナイトの価値は、どのような条件が基準になっているのでしょうか。
まず、ブルーが濃く鮮やかであること。
コバルトの含有量や微量金属との兼ね合いによって、ブルーのニュアンスが変わるようですね。
そして透明度が高く、美しいカットで、なるべくカラットが大きいものに価値があります。
コバルトガーナイトは、今のところ大きくても1ctほどの原石しか採れないのだそうですよ。
カットされたものは、0.5ct程度になってしまうのが現状とのことです。
さらに小さいカラットのものも多いようです。
コバルトガーナイトの市場価格
コバルトガーナイトは、どのくらいの価格で流通しているのでしょうか。
前述の通り、宝石品質で大きいものが採れにくいために、色や透明度やカットが美しいものは、たとえ0.1ctであっても数万円の価値が付けられているようです。
クォリティが高いコバルトガーナイトは、カラット数が高ければ高いほど、かなりの高額になっていくでしょう。
鮮やかで透明度の高いコバルトブルーで、上質なカットが施された1ct以上のコバルトガーナイトがあったら・・・考えただけでも気が遠くなりますが、そんな素晴らしい宝石を見てみたいものですよね!
コバルトガーナイトはどこで買える?
2018年の終わりにに発見された、とても新しい宝石コバルトガーナイト。
最近では、ミネラルショーで見かけることも増えてきた印象です。
オンラインショップでも、ルースを販売しているのを見かけるようになりましたよね。
とても人気の高い宝石だということが伺えます。
似たような色の宝石が多いので、しっかり調べてから購入することをオススメします。
コバルトガーナイトのお手入れ方法
コバルトガーナイトはモース硬度7.5 – 8.0で高めです。
特定方向からの衝撃に弱い劈開性も不明瞭と強い方ではありませんので比較的取り扱いしやすい宝石ではないかと思います。
とは言え、強い衝撃を加えれば傷ついたり欠けたりする可能性はゼロではありませんので、ジュエリーとして身に着ける場合は特に気をつけましょう。
日常のお手入れは使い終わった後に柔らかい布などで拭くだけでも汗やホコリなどが取れキレイを長持ちさせやすいです。
多少のアルコールは問題ありませんので、アルコールティッシュなどでサッと拭いてもキレイになりますよ。
時々石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で洗うのも良いと思います。
保管の際は他の宝石とぶつからないよう、仕切りのある箱や小袋に入れて個別にしまった方がぶつかり合って傷つけ合う恐れが減るので安心です。
最後に
最近発見されたことで話題の宝石、コバルトガーナイトをご紹介しました。
深くて鮮やかなコバルトブルーに魅了されてしまう方はきっと多いことでしょう。
コバルトガーナイトは多様で複雑なスピネルグループの一員です。
似た宝石に、スピネルとガーナイトの固溶体ガーノスピネルなどがあります。
コバルトガーナイトは、原石の状態でも最大1ctと小さな結晶しか産出されていませんが、いつか巨大な結晶が見つかると良いなと思います♪
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『美しい鉱物と宝石の事典』
著者:キンバリー・テイト 訳:松田和也/発行:創元社 ほか