皆さまはジュエリーリフォームもしくはジュエリーリモデルという言葉をご存知でしょうか。
今までにご興味をもたれたり、実際にやったことがある、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
ヨーロッパでは古くからの伝統ですが、日本では最近ようやく浸透し始めた印象があります。
それもそのはず、実は日本でこのような事業が本格的に始まってからまだ30年位しか経っていないそうなのです!
最近では専門店なども増え、身近な存在になってきた印象はありますが、まだまだ敷居が高いと感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、知ってみると意外に奥が深く面白かった、この世界!
今回は、先日カラッツ編集部が社団法人日本リ・ジュエリー協議会の会長である株式会社エクミス社長の山田悟氏にインタビューしてきた内容を中心にジュエリーリモデル(リフォーム)についてお話していきたいと思います!!
事業への想い、過去の驚きのエピソードや業界裏話、依頼する際のコツやアドバイス、そしてこれからジュエリー業界で働きたいと思っている方へのメッセージなど色々聞いてきたみたいですので、ぜひ楽しみにしてください♪
なお、日本リ・ジュエリー協議会にて、ジュエリーリモデルという言葉を推奨されているとのことですので、ココからはジュエリーリモデル(リフォーム)にて表記統一させて頂きますね!
では早速どうぞー。
目次
ジュエリーリモデル(リフォーム)とはどんな仕事?
山田社長(ココからは親しみを込めてそう呼ばせて頂きます!)のお話に入る前に、まずはジュエリーリモデル(リフォーム)がどんな仕事かなど、基本的な部分をお話しましょう!
ジュエリーリモデルとは、すでに出来上がっているジュエリーを新しいデザインに作り替える事です。
大切な方から貰ったり引き継いだりした、思い出深いジュエリーでも、デザインが古かったり破損などがあって使えない、でも捨てがたい、という理由から結局タンスの奥に眠らせたまま・・なんてことありませんか。
そんなお客さまにとって大切なジュエリーを再び使用できるよう生まれ変わらせるのがジュエリーリモデル(リフォーム)のお仕事です。
日本では「リフォーム」の方が聞き馴染みがありますが、欧米ではリモデルと呼ばれることが多いようです。
ジュエリーなどを代々受け継ぐ文化のあるヨーロッパなどでは古くから伝統的に行われています。
リモデル(リフォーム)の基本的な流れ
では次に、リモデル(リフォーム)の基本的な流れについて、山田社長が経営される株式会社エクミスさんの場合を例にお話しましょう。
エクミスさんではまず最初に、お客さまがお持ちになったジュエリーが以下のどの項目に当てはまるかを確認するところから始めるといいます。
1. そのままの形で残す
2. 地金だけ買い取る
3. 修理して使えるようにする
4. 形やデザインを変える
「 4. 形やデザインを変える」に分類されたものだけがリモデルの対象となり、それ以外に分類された場合は、それぞれに合った説明や対応がなされます。
リモデルすることが決まったら次に、素材やデザイン、加工方法、追加する宝石など具体的にどのようにしていきたいかを考えていきます。
ジュエリーの枠であるシルバーサンプルから好みのデザインを選んだり、地金や脇石を選び、見積もりを出してもらい、全て納得したら発注となります。
リモデル(リフォーム)にはどんなものがある?
ジュエリーのリモデルは、以下のような形が一般的です。
- 外した宝石を新しい枠に入れる。
- リングからネックレスなどへ変身させる。
- デザインの一部を変える。
しかし山田社長が考えるリモデルはそれだけではないそうです。
指輪のリサイズ、ネックレスのチェーン交換、真珠のネックレスの糸交換などもリモデルの一つだと思っていらっしゃるそうです。
それは何故か、は後からお話しましょう。
リモデル(リフォーム)で大切なこと
ジュエリーリモデル事業において、山田社長が思う最も大切なことは、お客様のお話をきちんと聞くことだそうです。
ジュエリーを入手された経緯や思い出などを詳しく伺い、そのジュエリーがそのお客さまにとって、どれほど大切な物であるかを語ってもらうのだそうです。
その方のジュエリーに込められた価値を“センチメンタルバリュー”と評し、ジュエリーに込められた思いを大切にしながら、新しい息吹を与える提案をお手伝いされているのだそうです。
ジュエリーリモデル(リフォーム)事業はどうしたら始められる?
では、ジュエリーリモデル(リフォーム)を仕事としてやってみたい!と思った時、何から始めれば良いのでしょうか。
まず最初にジュエリーリモデルのお仕事には、特に必須の資格などはありません。
つまり、明日いきなり始めることも不可能ではないということですね。
ただ、先にお話したとおり、状況に応じて地金を買い取ったりするかもしれませんので、古物商許可証は取っておいた方が良いかもしれません。
また、何の知識もないまま始めるのが不安という方は一般社団法人日本リ・ジュエリー協議会でジュエリー・リモデル・カウンセラーの資格試験を実施していますので、それに沿ってまずは勉強してみるのも良いかもしれません。
ただ、資格を取得したからといってすぐに何でも出来る訳ではないと思いますので、まずは店舗で働くなどして経験を積むことも大切とのことですよ。
ちなみにエクミスさんでも新人研修には特に力を入れていらっしゃるそうです。
詳しい話はインタビューの中でご紹介しますね!
日本リ・ジュエリー協議会会長山田悟氏について
ジュエリーリモデル(リフォーム)についてお分かり頂いたところで、そろそろ山田社長のインタビューに入っていきましょう!
まずは、簡単にご紹介させて頂きますね!
社団法人日本リ・ジュエリー協議会の会長でもある株式会社エクミス社長の山田悟氏は、実は日本で初めてジュエリーリモデルを事業化したいわば草分け的存在です。
1986年(昭和61年)にエクミスを創業した後、事業展開の一つとして、ジュエリーリモデルを開始されました。
当時国内にジュエリーリモデルの専門企業はなく、開始前周囲から「絶対失敗する」と猛反対を受けたそうです。
しかし後に、ジュエリーリモデル事業で多大な功績をおさめ、2001年に日本文化振興会より社会文化功労章を授与されました。
2009年に発足した日本リ・ジュエリー協議会では会長に就任され、リモデル・カウンセラーの資格制度を設立するなど、後進の育成にも情熱を注がれています。
さらに最近はTV通販を通じてリモデルの提案をスタートし、全国規模でのビジネスを展開されています。
これまでのジュエリー・リモデルの実績は70万点以上、豊かな経験から生み出されたビジネスノウハウ「SV STAGE リフォームシステム」の提案など、幅広くご活躍されています。
インタビュー開始!
この日カラッツ編集部が訪問したのは、東京都御徒町にあるエクミスさんの事務所です。当日は山田社長の他、スタッフの清水さんと遠山さんも同席してくださいました。
山田社長との対面に編集部員が緊張したのも束の間、明るくて親しみやすいそのお人柄に、一気にその場が和みました。
感動的な思い出話から笑えるエピソードまで、終始笑いが絶えないなか、あっという間に時間が経ってしまった感じがしたそうです。
では早速そんな楽しいお話を伺っていきましょう!!
ジュエリーリモデルを始めたきっかけ
ジュエリー業界に興味をもったきっかけは?
私は以前、エクミスを始める前ですね、羽毛布団や健康機器を販売する会社に勤めていました。
そこで宝石を売り始めたんですが、全然売れない。宝石を見ると社名が付いていないし、保証書もないのです。業者に聞くと、売っている側の信頼だけだと言うんです。訳が分からなくてね、どういう業界なんだと。
で、よくよく聞くとどうも違う。どこかで買った商品をカバンに入れて、そこの名前で売っている。今はほとんどいませんが、彼らを“かばん屋さん”と呼んでたんです。やるべき事が沢山ありそうだなと思いました。
他の商材は1回の販売で終わる事が多かったのですが、宝石は当時百貨店でも年に15回や20回催事を催していました。
指輪にネックレスとアイテムが多いので、1回買った人もまた買ってくれるんですよ。面白い業界だなと思ったのがきっかけでした。
リモデル事業を始めたきっかけは?
最初は呉服業界との同行販売でジュエリーを客宅にて販売していました。その時、お客様の家にはタンスに眠っているジュエリーが沢山あることを知りました。
お話を聞くと、チェーンが切れたりサイズが合わないからとのこと。店で修理してもらえばと言うと、新しいのを買わされそうだとか、敷居が高そうだからとかで、嫌だとおっしゃるんです。
それで、「使えないものを使えるようにしたらどうですか」とお客様に提案したことから、リモデル事業を始めたんです。思いを繋げる“センチメンタルバリュー”としてですね。ジュエリーを使えるようにして譲ってあげるのが、リモデルなんですね。宝石は地球がくれた贈り物です。ハッピーな時に売れるんですよ。思いを繋ぐものなんですよね。
昔と今の違いは?
リモデルに対する一般的な認知度は、30年前とは変わりましたか?
大分認知されてきましたね。始めた頃は、お客さんに枠を見せたら商品だと思われたんです。以前よりはかなり認知度が上がった気はしますが、それでもまだ知らない人も多いようですね。どこでやって良いのか分からない、値段がどうなのかも分からない。預ける怖さがあると聞きますね。
お客様の年齢層も、大分変わりました。30年前は50代から60代の方が多かった。今は40代や50代が多く、終活されるご家族から頂いたものが増えてきました。形見もあるんでしょうね。これからは、もっと増えると思います。
今までで印象に残っていることは?
歴史ある宝石を預かったことはありますか?
満州から引き揚げた時に命からがら持って来たというダイヤをお預かりしたことがあります。旦那様から引き継いだ形見のダイヤで、とても大事にされていたそうです。お孫さんが結婚されるときにそれを出されたんです。その思い出話をされた時、家族全員がボロボロと泣いたというエピソードがあります。そのダイヤを婚約指輪にリモデルされたいとおっしゃってね。
リモデルは、お客様の大切な思い出も繋ぐんです。リモデルビジネスは、感動ビジネスなんですよ。1点1点に思いや感動が詰まっている。私はそう思います。
今までで一番のトラブルは?
多分2ctダイヤの紛失事件ですね、清水さんが担当していた(笑)
(清水さんを見ながら)あれは大変だった。
ある時2ctのダイヤモンドが付いた指輪のサイズ直しの依頼が来たんです。当時階下にあった業者に頼んだのですが、その指輪を預けた後間もなくしてその業者が倒産して行方が分からなくなったんですよ。結局どうすることもできず、お客様の自宅へ伺って謝罪して、代わりのダイヤをいくつか見せました。幾つかランク別で持って行っていたのですが、実は元々その2ctダイヤモンド、色々曰く付きのものだったらしく、比較的良い所で折り合いがついたので良かったのですが。。あれは本当にヒヤッとしましたね。
ジュエリーリモデル(リフォーム)で起こりやすいトラブル
ジュエリーリモデル(リフォーム)には何かとトラブルも起こりやすいといいます。
エクミスさんの長い歴史の中でよくあるトラブルとそれに対する対策などについても伺いました!
よくあるトラブルと注意点について
よくあるトラブルは?
デザイン違いとかですね。昔はデザイナーが絵で描いていたので、こちらの見る目とお客様の見る目が違うんです。謂わばイメージのズレですね。事業を始めた当初は、カタログの写真だけだったんです。それで、シルバーサンプルを始めた。シルバーサンプルでリモデルを始めたのは、日本では弊社が最初だったと思います。
リモデルで注意する点は?
ジュエリーから宝石を外すと、隠れていたところに傷や破損がある場合もあります。ある時パールを外したら、大きな穴が開いていたこともありました。隠してセッティングしてあるんですね。お客様はセッティングしてある状態でしか見たことがなかったりしますので、完成後のイメージ違いからくる誤解を避けるため、出来るだけ、お客様の目の前で外して全部見せるようにしています。
宝石のすり替えを気にされる方もいらっしゃるのでは?
いらっしゃいますね。弊社では、すり替えの疑いがないように必ずお客様の目の前でジュエリーから宝石を取り外しています。石の状態もその場で確認しています。また、品質保証のためにリモデルした商品にはすべてエクミスのロゴマークを刻印しています。
ビフォーアフターの写真も撮影し、加工品質証明書も発行しているんですよ。
リモデル(リフォーム)はお金をもらって作るだけではダメ
ジュエリーリモデルで最も大切なことは何だと思いますか。
思いを繋ぐこと、でしょうか。“センチメンタルバリュー”ですね。
ウチは新人研修を2ヶ月位行うのですが、ロールプレイング研修の形を主にとり、色々な場面を想定しながらロールプレイングを繰り返し行うことでコツを掴んでもらうようにしています。
そこで最初に教えることは、お客様のお話を聞くということです。
まずはお客様に語ってもらい、思い出やそのジュエリーへの思いを知り、その大切な思いを繋ぐための提案ができることが大事だと思っています。
また、ジュエリーはメンテナンスが必要なんですよ。指輪の爪は金属だから、多少伸びるんです。そこに引っ掛かって取れたりする。定期的なメンテナンスが必要なことを売る側は言ってあげるべきだと思っています。
定期的にメンテナンスに来てもらい、必要であればその時リモデルの提案をすることも必要だと思っています。
私が指輪のリサイズやネックレスのチェーン交換、真珠のネックレスの糸交換などもリモデルの一つだと思っているのはそういったところから来ているのかもしれませんね。
ジュエリーリモデル(リフォーム)をお考えの方へのアドバイス
ジュエリーリモデル(リフォーム)する際には、ちょっとした工夫でジュエリーをより魅力的にすることが可能なのだそうです。
リモデルを依頼する際の大切なポイントを、山田社長に教えて頂きました。
安くおさえるポイントとやりがちな失敗
リモデルで出来るだけ金額を抑えるには?
例えばリングなら、台座だけを切ってそのままネックレスにするんです。そうすると安く出来ます。残った貴金属の部分は下取りできますしね。
指輪、ネックレス、ピアス、オススメの形は?
日本のジュエリーの基本だと思うのですが、良質の石は指輪にすることが多いんです。多分、着物の文化から来ているんだと思います。着物には指輪が合いますから。次にペンダントで、イヤリングやピアスの順ですね。リモデルの際にも、品質の良い石は指輪にすることを勧めています。
ただ逆に言えば、元々指輪になっていたものは良い石である場合も多いのでペンダントにリモデルすることもオススメなんですよ。特に婚約指輪の立て爪ダイヤなどは良い石を使っているから、ペンダントにすると凄く綺麗なんですね。胸元でキラキラよく光って人目を惹くんです。
素人がやりがちな失敗などありますか?
シンプルにし過ぎてしまう事ですね。低単価にこだわってシンプルにしてしまうと、後で物足りないとか、またリモデルして欲しい、みたいな話も聞きます。予算もあるでしょうが、思い切らないとある程度良いものが買えないですよね。良いものを着けていれば自分も満足するし、人からも褒めてもらえます。そこに満足感もあるじゃないですか。
これからジュエリー業界で働こうと思っている人たちに伝えたいこと
ジュエリーリモデル(リフォーム)業の先駆者として道を切り開いてきた山田社長は、今後も新しい事にチャレンジされたいそうです。
山田社長自身の将来への希望と、これからジュエリー業界に参入したい人達に向けてのメッセージなどをお尋ねしてみました。
学んだのは「思いは通じる」ということ
ジュエリーリモデルを始めて、学んだことは?
毎日が学びですね。石に対する思いが1人1人に深くあるんだなという事は学びます。それと、思いは通じるという事ですね。あんなに反対されましたが、ここまで来れて良かったと思います。まだ35年ですけどね。もし、あの2ctのダイヤの時に諦めていたらと思います。大事件だったんですから(笑)。(清水さんを見ながら)
この話、実は後日談があるんですよ。リモデルして綺麗に生まれ変わり、お客さんは大喜びしてくれたんです。それから1年位して電話が掛かってきた。どうしたのかと尋ねると「売りたいの。いくら?」とおっしゃるんですよ。 結局、買取りはしませんでしたけどね(笑)
今から挑戦してみたいことは?
人材育成ですね。セミナーみたいな感じで、新卒だけじゃなく中途の方や女性を含めて教育して、ジュエリー業界に送り出したい。今ならリモートで全国の方に教えるのも良いですね。全国のリモデルカウンセラーと一緒に、新しい何かを始めたいですね。ジュエリー業界を少しでも変えられたらなと思います。大きな夢ですね。
これからジュエリー業界に参入したい方へのメッセージ
まずはぜひ、リモデルカウンセラーの資格を取って下さい(笑)。
これからは、物を売るだけでは本当に厳しいです。石や作りの知識など、総合的な勉強が必要です。ただ物を売るという時代は終わったんです。
私は人と同じ事をするのが苦手な性格で、何かと新しい事に挑戦したくなるんです。人と違うことをやるなら、道を作るんです。大変だけれど、振り向いたら道が出来ていたんです。やって成功したら1人勝ちだ!という気持ちでね。諦めないで、毎日コツコツと続けることです。
最後に
過去に経験されたエピソードやジュエリーリモデル(リフォーム)への熱い想いを感動的に、時には面白おかしく語って下さった山田社長。
本当に温かくて、人情味溢れるお人柄が伝わってきました。
ヨーロッパでは代々引き継いだジュエリーを作り直すのは古くからの伝統ですが、今後日本でも需要が増えていくのではないかと思われます。
山田社長が築かれた日本でのジュエリーリモデルというお仕事が、次世代へと引き継がれていくことを心から楽しみにしています。
カラッツ編集部 監修