サファイアやルビーには、加熱・非加熱といった表示がされている場合があります。
加熱処理がされた宝石とは、一体どういった品質で、どれ程の価値があるのでしょうか。
こちらでは、鉱物コランダムの一種であるサファイアとルビーに焦点を当て、加熱処理や非加熱の違いについて探っていきたいと思います。
目次
ポイント① そもそも何で宝石に加熱処理をするの?
宝石に加熱処理を施す理由は、色や透明感を引き上げるためです。
ルビーのレッドやサファイアのブルーがくすんでいたり、色ムラが激しい場合は、加熱処理によって色と透明度を整え、美しく仕上げます。
つまり、原石がくすんだ色合いをしたルビーやサファイアは、市場に出しても売れる可能性が低いと考えられるため、市場に出す前に見た目を整えてあげるのです。
色の綺麗な宝石にすることで、より多くの人の目に留まり、さらに良い価格で買取ってもらえる可能性が上がるという訳です。
ポイント② 加熱処理って何をすることなの?
加熱処理を施すにはまずルビーやサファイアを専門の道具や機械に入れます。
※昔ながらの手法からハイテク機器を使った方法まで様々な形で行われているといいます。
高温度と高圧力、大気組成の中に入れる事で、結晶中にある微量の元素が反応して色が整えられるそうです。
簡単にいうと、鉱物が地中で生成する場合と同じような環境を人工的につくるということですね。
また、黒いくすみの原因となる鉄やクロム、チタンなどといった元素が多く含まれている場合には、これらに化学反応を起こさせることで色を鮮やかにするとか。
加熱処理の歴史
宝石を加熱処理していた歴史は古く、紀元前の古代エジプトや古代インドではすでに加熱処理をして色のエンハンスを行っていたという記録があります。
スリランカでは、薪や木炭などの火によって何時間、時には何日間も加熱して色を美しく変化させていたそうです。
加熱処理が本格的に行われるようになったのは、1960年代に入ってからといわれています。
タイの宝石商がギウーダという、乳白色の低品質サファイアを発見します。
その後ギウーダは、加熱する事により鮮やかなブルーに変化することが判明。
これをきっかけに、世界中で加熱処理機器の開発が盛んになったといいます。
ポイント③ 加熱・非加熱はどう違うの?
加熱ルビー・サファイア
コランダムには、内包物としてキレイな針状のインクルージョンが含まれることがあるといいますが、加熱することでそのキレイな針状の形が途切れたりする場合があるそうです。
そのため、加熱されたルビーやサファイアには途切れた針状インクルージョンや円盤状または丸い綿状の内包物が特徴として見られることが多いといわれています。
また表面に穴やヒビが入っていることもあるそうです。
非加熱ルビー・サファイア
上記と逆に、非加熱のものでは針状インクルージョンなどコランダムの特徴的な内包物をそのまま見ることができます。
非加熱でも色鮮やかで美しいコランダムには、大変高い価値が付けられます。
特にモゴック産の非加熱ルビーなどは、コレクターにも人気がある希少な宝石です。
非加熱シトリン
少し変わり種で、シトリンをご紹介します。
シトリンはそのほとんどが加熱されていると言われていますが、加熱か非加熱かを科学的に調べることが難しいといわれています。
「非加熱シトリン」という記載で販売がされている場合はお店の方に確認した方が良いかもしれません。
結局、ジュエリーとして買うなら加熱?非加熱?
加熱処理とは、基本的に色を美しくする工程なので宝石そのものは天然のまま。
本来くすんでいた色をエンハンスすることで、色が鮮やかで透明度の高い宝石へと変身させるだけです。
現在市場に出回っているほとんどのルビーやサファイアには、加熱処理が施されています。
非加熱でも色鮮やかなものは希少性が高くなる分お値段も上がる傾向にあります。
個人的には見た目だけを気にされるのでしたら加熱処理のルビーやサファイアで十分に楽しんでいただけるのではと思います。
一方、資産価値やコレクションとしての価値などを気にされる方にとっては、非加熱のルビーやサファイアは年々希少性が高まっているので検討対象になるかと思います。
鑑別書に加熱か非加熱かの評価も記載されていますので、参考にしてみると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。遠い昔から行われてきた宝石の加熱処理。
加熱によって色を美しく整える方法は、人々の知恵と高い技術によって時代を超えて受け継がれてきました。
内包物などが多すぎると、その宝石が本来もつ美しい色が隠されてしまうこともあります。
加熱処理は、宝石が隠し持っている、素敵な魅力を引き出すお手伝いをするもの。
高熱を与える事により欠点を補う。
そしてジュエリーとして輝ける美しい宝石に仕上げられ、私達の手に届く様になるのですね。
カラッツ編集部 監修