「宝石とは大自然が生み出したもので、美しく、永く身につけることができて価値を持ち続けるもの」
と語ったのは宝石業界の目利きと名高い諏訪恭一さん。なるほど~、宝石って確かにそうですよね。
一般的に「宝石の条件」といえば、
・色や輝きが美しいもの
・硬質で、変わらない耐久性があること
・産出量が少ない(希少性がある)
この3つの条件は欠かせません。そうです。宝石は綺麗なだけじゃダメなのです。
今回は、この中の二番目、宝石の重要な条件の一つである「硬度」ついて詳しく紹介します!
宝石の硬さを示す指標は「モース硬度」
1822年、ドイツの鉱物学者、フリードリッヒ・モースが、「2つの違う石をこすり合わせて、どちらに傷がつくかで石の硬さを判断する」という硬度を提唱しました。これが「モース硬度」です。
もっとも硬い基準を「10」とし、もっとも柔らかいものを「1」という数値で表し、ほとんどの宝石の硬度を調べました。
現在、地球上でもっとも硬い宝石はダイヤモンドで、一番やわらかい鉱物は滑石と言われています。
ちなみにこの基準では、人間の爪は「2.5」程度の硬度になるとか。
ただし、この硬度「10」というのは、硬度「1」の10倍硬い、ということではありません。
例えば硬度10の次の硬度9の硬さは硬度10の140分の1とされています。
モース硬度 | ||
10 | ダイヤモンド | 宝石として扱われる鉱物の中で一番硬い |
9 | ルビー、サファイア | ダイヤモンド以外の宝石に傷をつけられる |
8 | トパーズ、スピネル | やすりなどでは傷がつかない |
7 | 水晶、トルマリン、ヒスイ | やすりでわずかに傷がつく |
6 | トルコ石、ラピスラズリ | やすりで傷がつく。窓ガラスよりやや硬い |
5 | 黒曜石、憐灰石 | ナイフでわずかに傷がつく。窓ガラスと同じ硬さ |
4 | 蛍石、マラカイト | ナイフの刃で傷をつけられる |
3 | 方解石、大理石 | 硬貨でこするとわずかに傷がつく |
2 | 石膏 | 指の爪でわずかに傷がつく |
1 | 滑石 | 爪で傷がつく |
ヌープ硬度とは
宝石の硬さといえば、モース硬度が一般的ですが、1939年、アメリカのヌープが
「より科学的な硬度表記を可能にしたもの」
ということで、「ヌープ硬度」を考案しました。これは先端がダイヤモンドの四角錐になっている部分を鉱物に当てて、どの程度の跡がついたかで硬度を決めるというもの。
これはモース硬度に比べてより科学的な測り方とされ、工業用材料や加工技術面で主に用いられています。
ちなみにモース硬度とヌープ硬度を比較してみると、
ヌープ硬度 | 宝石名 | モース硬度 |
6000~8500 | ダイヤモンド | 10 |
1600~2000 | ルビー、サフィヤ | 9 |
1200~1500 | エメラルド、トパーズ、アクアマリン | 8 |
700~900 | アメジスト、ヒスイ | 7 |
540~600 | オパール、トルコ石、ムーンストーン | 6 |
420~500 | アパタイト | 5 |
170~190 | マラカイト | 4 |
110~140 | 大理石、方解石 | 3 |
40~60 | 石膏、琥珀 | 2 |
16~30 | 滑石 | 1 |
となります。
新モース硬度、という指標もあった!
モース硬度をさらに詳しくした指標に「新モース硬度」というものもあります。これは硬度の評価がモース硬度の10段階に対して15段階とさらに細かく分類したもの。
新モース硬度 | 新モース硬度 | ||
15 | ダイヤモンド | 7 | 溶解石英 |
14 | 炭化ホウ素 | 6 | 正長石 |
13 | 炭化ケイ素 | 5 | 憐灰石 |
12 | 溶解アルミナ | 4 | 蛍石 |
11 | 溶解ジルコニア | 3 | 方解石 |
10 | 柘榴石 | 2 | 石膏 |
9 | トパーズ | 1 | 滑石 |
8 | 水晶 |
うーん、正直、ここまで細かく分類しなくてもいいのでは?と思ってしまいます。私は宝石業界にかなり長く携わっていますが、この「新モース硬度」という言葉は聞いたことがありませんでした。
ダイヤモンドは硬くても割れることがある
地球上でもっとも硬い宝石、ダイヤモンド。ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨くことができません。これは当然です。
しかし、そんな最強のダイヤモンドにも欠点があります。
それは「ダイヤモンドは硬いけど、決まった方向には割れやすい」
ということ。
宝石や鉱物には、ある一定の方向に割れやすいという性質をもつものが多くあります。この性質を「へき開」といいます。
鉱物は種類によってこの「へき開」が決まっているので、鉱物を識別するときの手がかりになります。
ダイヤモンドも鉄の塊ではさんでハンマーで叩けば割れます。四角錐の形のダイヤモンドは、決まった方向で圧を加えると、4方向にきれいに割れるそうです。
つまり、「モース硬度が高い=割れない」ということではありませんので、「モース硬度」はあくまでも指針として、どの宝石にもそれぞれの特徴や注意点があるので、その点をケアしながら、長く上手に付き合っていって下さいね。
カラッツ編集部 監修