宇宙から宝石が降ってくるなんて、そんな夢のようなお話はあるのでしょうか!?
実はあるのです!それはパラサイトペリドット(パラサイティックペリドット)。
パラサイト隕石に含まれたペリドットのことです。
空からキラキラとした宝石が降ってくる、というイメージではありませんが、宇宙の何処かで生成された宝石が地球にやって来たと考えるとちょっとワクワクしませんか!?
ペリドットといえば、8月の誕生石として愛されていますが、地球と宇宙の両方に存在しているとは、かなり驚きました。
宇宙の壮大なロマンを感じる、パラサイトペリドットと、パラサイト隕石についてのお話をしましょう。
目次
パラサイトペリドット(パラサイティックペリドット)とは?
独特なオリーブ色の輝きが特徴のペリドット。
デザインによっては和装にも洋装にも合うため幅広く使いやすい宝石のように思います。
私もペリドットのピアスを持っていますが、どんな色の服にも合うので重宝しています。
そんなペリドットは、驚くことに、地球だけでなく宇宙にも存在しているのです!
隕石に含まれて地球にやって来たペリドットのことを、パラサイトペリドット、またはパラサイティックペリドットと呼びます。
パラサイトペリドットは小さな結晶であることが多く、0.1ct以上のものは殆どないのだそうです。
カッティングを施すことができる品質のものとなると、かなりレアなのだそうですよ。
小さいながらも宇宙の底知れぬパワーを秘めたかのようなパラサイトペリドット。
ではもう少し深堀りしていきましょう。
隕石の種類
隕石は大きく3つ、鉄隕石、石質隕石、石鉄隕石に分類することができるといいます。
鉄隕石は、金属鉄と様々な量のニッケルからできているそうです。
つまり、金属でできた隕石ということですね。
隕鉄とも呼ばれていて、とても重いという特徴があるそうです。
石質隕石は鉱物でできた隕石で、コンドリュールという珪酸塩鉱物の小球を含むか否かによってコンドライトとエコンドライトに分けられます。
地上に届く約8割が石質隕石だといわれています。
石鉄隕石は、鉄と珪酸塩鉱物の混合物です。
この中にパラサイトペリドットが含まれたパラサイト隕石があります。
そもそも隕石とは
隕石とは太陽系で生成した岩石が、太陽の周りを回っているうちに地球に落下したものです。
夜空をサーッと横切る流れ星は、その多くが空気との摩擦熱で燃え尽きてしまうのですが、中には火球となり地上に落下するものもあります。それが隕石です。
地上まで届く隕石の多くは、大きくても約10g、小さいものは約1㎎程度にまで摩耗してしまうのだそうです。
私はテレビなどでしか火球を見たことがないのですが、家族は見たことがあるそうです。
夜の山道を車で走っていると、あたりが突然昼間のように明るくなって、ゴーっという轟音とともに火の玉が山の向こうに落下していった、と、興奮気味に話してくれたことがあります。
その時の隕石、どこに落ちたんでしょう。ペリドットが含まれていたら面白いですよね!
実は日本は世界有数の隕石保有国なのだそうですよ。
南極地域観測隊が、南極で多くの隕石を採取しているのだそうです。
見つかった隕石がどの惑星から来たのか、などの研究もされているそうです。
パラサイト隕石とは
パラサイト隕石は、先ほども申し上げた通り、鉄などの金属と鉱物が混じった石鉄隕石の一種です。
これまで発見された隕石の中で、パラサイト隕石はわずか1%程度なのだそうですよ。
パラサイト隕石は、鉄-ニッケル基質の中に、半透明のかんらん石(ペリドット)などの珪酸塩鉱物が散らばっています。
パラサイト隕石の断面を見てみると、金属と珪酸塩鉱物の割合は、大体2:1になるそうです。
パラサイト隕石の仲間にメシソデライトと呼ばれるものがあり、それは金属と珪酸塩鉱物の割合が同等位で、比較的珍しい石質隕石なのだそうです。
パラサイト隕石に含まれる珪酸塩鉱物は、かんらん石(ペリドット)だけでなく、苦土かんらん石(フォルステライト)、輝石(パイロクシーン)、斜長石(プラジオクレース)などもあるそうです。
これらはどれも地球上の岩石にも見られるものです。
隕石に地球と同じ鉱物が含まれるなんて、やはり地球は宇宙の一部なんだと実感できますね。
パラサイト隕石は、小さな惑星の鉄の核と珪酸塩でできたマントルとの境界部分にある物質が由来だと考えられていましたが、現在では、核とマントルの物質が衝突して生成された混合物であるともいわれています。
地球起源のペリドットも、地球のマントルを構成する物質が結晶化したものだと考えられています。
マントルの対流によって地表近くに押し出されたペリドットを、私たち人間が採取している、ということになるのだとか。
いずれも惑星の内部で生成されているという点では同じなのですね。
パラサイトペリドットと地球起源のペリドットとの違い
画像:左-パラサイトペリドット 右-ペリドット
では、宇宙からやってきたパラサイトペリドットと地球起源のペリドットとの違いとは何なのでしょう。
性質の違い
まず、パラサイトペリドットは地球起源のペリドットよりも比重が高めなものが多いそうです。
そして、成分にも違いが見られます。
ある研究によると、パラサイトペリドットは地球起源のペリドットに比べニッケルが総じて少ないものが多かったと報告されています。
鉄とニッケルの合金である隕石に覆われているにも関わらず少ないとは、不思議ですよね!
ただ、スリランカ産ペリドットの中にはニッケルが少ないものもあったそうで、一概に違うとは言い切れないとも報告されています。
鉄分については、両者に違いはあまり見られないそうです。
また、パラサイトペリドットには隠れた劈開があるといわれています。
これは結晶内にできた歪みのことで、パラサイトペリドットは宇宙からそのまま減速することなく大気圏に突入し地表に激突したものですから、激突時の強い力により結晶内に歪みが生じている場合が多いそうです。
それがカットの際、石が割れる原因となることから、カッター達の間で隠れた劈開があるとされ、ファセットカットを施すのが難しかったそうです。
近年カットの技術が発達しファセットカットを施せるようになったことから、市場でカットされたパラサイトペリドットが見られるようになったそうですよ。
色
色調にも違いが見られます。
パラサイトペリドットはペリドットと比べてイエローや褐色が少し強い印象です。
これは、パラサイトペリドットには褐色のインクルージョンがある場合が多いからです。
インクルージョン
パラサイトペリドットのインクルージョンは隕石の成分である鉄やニッケルなどの作用によるものだそうです。
ゴロッとした金属光沢のインクルージョンが見られることがあり、磁石にくっつくものもあるのだそうですよ。
または、隕石に含まれる金属が解けた状態でパラサイトペリドットの内部に入り込み、黄褐色から茶褐色の液体インクルージョンになることも。
液体インクルージョンと言っても、実際は固体化しています。
薄いフレーク状のインクルージョンや、一定方向に並ぶ針状のインクルージョンもあります。
針状のインクルージョンは、鉄やニッケルなど隕石の成分でできていて、中には、キャッツアイ効果となって現れることもあるのだそうですよ。
パラサイトペリドットにキャッツアイ効果のあるものが存在するなんて、宇宙の彼方から届く閃光を感じさせてくれそうです!
パラサイトペリドット(パラサイティックペリドット)の歴史
さて、パラサイトペリドットの歴史という観点から見てみましょう。
パラサイトペリドットをはじめ、ほとんどの隕石は、火星と土星の間にある小惑星帯から地球にやってくるのだそうです。
とても小さな惑星同士が衝突して軌道を離れ、地球の引力に偶然引っ張られ、隕石となって落下してくるのです。
地球との距離を見ると、軌道によって変わるのですが、土星までは約15億km、火星は約2億3000万kmとのことです。
遠すぎて実際の距離はよく分かりませんが、いずれにせよ、気の遠くなるような距離と気の遠くなるような時間をかけて地球にやってきたと考えると、一つ一つ違う歴史や背景をもっていると思え、より強くロマンを感じざるを得ませんね!
名前の意味
パラサイトペリドットが命名されたのは1759年のことだといわれています。
ロシアのクラスノヤルスク市で発見された鉱物を調査したドイツの博物学者P.Pallas氏に因んで名づけられたのだそうです。
しかし、私はちょっとビックリしてしまいました・・・パラサイトって、人名が由来だったのですね!
私はてっきり、”寄生する”のパラサイトかと思っていました。
隕石に寄生しているかのように含まれているペリドットのことかな、と勝手に思っていたのです。
ちゃんと調べると、寄生はparasiteで、パラサイトペリドットのパラサイトはpallasiteなので、綴りが全く違います。
両者とも、日本語では「パラサイト」と書きますが、発音はRとLの違いをハッキリ出す必要がありますね!
パラサイトペリドット(パラサイティックペリドット)の価値基準と市場価格
とても希少なパラサイトペリドットですが、買うことはできるのでしょうか。
もし手元に置くことができたら、宇宙を手にしているような壮大なロマンを感じることができるでしょうね。
パラサイトペリドットの価値基準や価格、購入できる場所などを調べてみました。
価値基準
どのような状態のパラサイトペリドットに、高い価値が認められるのでしょうか。
まずは大きさでしょう。
パラサイトペリドットは、何度も言うように、総じて微小なものしか採れません。
ですので、カッティングされたルースの状態で、大きくなればなるほど価値が高くなる傾向にあります。
カットされた状態で一番多いのは0.2ct以下で、その割合は90%以上を占める、というデータを見たことがありますよ。
1ct以上ともなれば、0.5%くらいしかないのだそうです。かなりの希少性ですね。
それから、色が濃くて透明度が高いもの、カットが美しいものであれば、また価値は上がってくるでしょう。
大きくて美しいパラサイトペリドットに出会いたいものです!
市場価格
宝石品質で大きいパラサイトペリドットは、なかなか採れるものではないことは、これまで述べた通りです。
しかも、宇宙から大気圏に突入し、地表に激突するという大きな衝撃をうけたパラサイトペリドットは、結晶内に隠れた劈開(へきかい)が生じているため、カッティング技術の高さが求められます。
カットが美しく品質の高いパラサイトペリドットは0.1ctと小さなものでも数万円以上するものもあります。
更に大きいものであれば、数十万円以上するものもあると思います。
どこで買える?
かなりのレアストーンであるパラサイトペリドットはどこで買うことができるのでしょうか。
最近は、ルースであれば、オンラインショップを中心にレアストーンの取り扱いをしているお店で見かけるようになりました。
また、各地で開催されているミネラルショーで販売されている事もあるようです。
パラサイト隕石として隕石に入った状態で売られている場合も多そうです。
高額のものを購入する際は、きちんと信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付けられているものの方が安心でしょう。
最後に
宇宙の宝石、パラサイトペリドットについてお話しました。
いかがでしたか?すごくロマンを感じる宝石ですよね。
今、こうしているうちにも、小さな惑星の衝突が起きて、ペリドットを含んだ隕石が地球に向かって落下しているかもしれませんよね。
隕石を見つけるテレビ番組をいくつか観たことがありますが、案外近くに落ちているかもしれないんだな、とビックリした覚えがあります。
磁石を持って、隕石を探しに行ってみたいですよね!
そして、見つけた隕石の中でパラサイトペリドットが光っていたらどんなに嬉しいでしょうか。
目の前の日常に忙殺されているときに、パラサイトペリドットに触れることができれば、宇宙に思いを馳せることができて、小さな悩みも吹き飛びそうですね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか