樹液の化石が宝石になった琥珀。
昆虫や植物が閉じ込められたものもあり、まるでタイムカプセルのよう!
琥珀は世界中で産出されますが、有名なのはバルト海やドミニカ共和国です。
日本にも琥珀の産地がいくつかありますよ。
今回は、琥珀の産地別特徴や原石の形についてお話しましょう。
琥珀とは?
琥珀は、太古の昔に樹木からでた樹液が固まって樹脂となり、地層に埋もれた後、化石化してできたものです。
ダイヤモンドやサファイアなどとは異なる、有機質の宝石です。
主に数億年~数千万年前に形成されたと考えられ、現在見つかっている最古の琥珀は3億6500万年前のものだといわれています。
琥珀に成りきる前のものはコーパルと呼ばれています。
ピットアンバーとシーアンバー
琥珀は、産出状態によって2種類に分けることができます。
地層の中から見つかるピットアンバーと、海岸に流れ着くシーアンバーです。
ピットアンバー
ピットアンバーのピット(pit)とは立坑のこと。坑道を掘って地層の中の琥珀を採掘することからそう呼ばれています。
アースアンバー(アースストーン)と呼ばれることもあるそうですよ。
中には樹木に付着したまま琥珀になったものや石炭層の中から見つかるものもあるそうです。
シーアンバー
シーアンバーのシー(sea)は海のこと。ドリフトアンバー(漂流琥珀)と呼ばれることもあるそうです。
琥珀が含まれた地層が崩落したり洗い出されたりして、長い年月をかけて海岸に流れ着いたものを指しています。
琥珀は海水に浮くので波に乗って漂流し、流れ着いた地で再び堆積していくのだそうです。
漂着後にその地の地層に埋もれ、地層の中から見つかるものもあるといいます。
琥珀の主な産地と産地別特徴
ヨーロッパやアジア、アメリカ大陸、中央アメリカ、南アメリカなど、琥珀の産地は世界中にあります。
コーパルも含めると、2015年時点で数百以上の産地があるといわれているそうですよ。
良質な琥珀の産地として特に有名なのは、冒頭でもお伝えしたとおり、バルト海やドミニカ共和国です。
それぞれの産地別特徴について少しご紹介しましょう。
バルト海で採れる琥珀
ヨーロッパからロシアにかけて広がるバルト海は、古代からよく知られた琥珀の産地です。
ロシアの地層から琥珀が流れ出し、ポーランドやドイツ、デンマーク、リトアニアなどに漂着するのだそう。
バルト海で採れる琥珀はシーアンバーが主ですが、漂着した後、長い年月の中で海岸の地層に埋もれ、掘りおこされるものもあり、それらはピットアンバーに分類されるそうです。
バルト海の琥珀は主に半透明~不透明であることが多いそうです。
琥珀の中に無数の気泡を含んでいる部分は、漂流中、クッションの役割を果たし衝撃から守られますが、逆に気泡が少ない部分は削られ次第になくなってしまうといいます。
つまり、気泡が多く入った硬い部分の方が残りやすく、その結果、透明度が低いものが多くなるということです。
そのため、透明度が高く色も美しい琥珀は希少なことから価値高く扱われるといいます。
バルト海の琥珀は地質学的にも起源が古く、最上級の琥珀が産出されるといわれますが、それでも宝石として出回るのは3割程度で、多くは薬品や工業用に使われるそうです。
ドミニカ共和国で採れる琥珀
カリブ海に浮かぶドミニカ共和国では、昆虫や植物などを含むピットアンバーが採れることで有名です。
生物、鉱物、水などが入ったものが見つかることもあるそうですよ。
ドミニカ共和国は、紫外線によってブルーやグリーンに蛍光するブルーアンバーやグリーンアンバーなどが多く見つかることでも知られています。
主に約3千8百万~2千4百万年前のものが多いとされます。
琥珀が形成される年代としては、比較的新しいものが多いようですね。
日本で採れる琥珀
日本で産出される琥珀についてもお話しましょう。
日本の琥珀の産地は8カ所ほど確認されています。
日本最古の琥珀は1億1千万年から9千万年前に生成されたもので、千葉県銚子市で見つかったといいます。
また、虫入り琥珀やコパールは、福島県、岐阜県、岩手県などで見つかったことがあります。
これら日本の産地の中で、最も良質な琥珀が採れるといわれる、岩手県久慈市についてもう少し詳しくご紹介しましょう。
岩手県久慈市
岩手県久慈市の琥珀は、主にピットアンバーで、中生代白亜紀後期のものといわれています。
世界最古の鳥類の後羽入り琥珀や珍しいカマキリ入り琥珀が見つかったことでも知られています。
ここで採れる虫入り琥珀は、学術的にも貴重な種類が多く、研究にも役立てられています。
世界的に見て産出量は少ないものの、良質のものも多いとされ、色は主に赤味のある茶褐色、縞模様、ブラックなどが採れるといいます。
久慈琥珀の推定埋蔵量は、約5万トンと考えられているそうです。
琥珀の原石の形と産出状態
琥珀の原石の形は、ピットアンバーとシーアンバーとで違います。
ピットアンバーの原石は、主に地層から掘り出されます。
樹木に付いた状態で埋もれていたり、中には石炭層から見つかるものなどもあり、全般的に見た目がゴツゴツしているものが多いようです。
一方、シーアンバーの原石は波に削られるため角が削られていて、硬質な被膜で覆われているものが多いといわれています。
透明度の高い琥珀は、ピットアンバーの方がシーアンバーより多い傾向にあります。
最後に
太古の地球のロマンが凝縮されたような宝石、琥珀についてお話しました。
バルト海の琥珀はシーアンバー、ドミニカ共和国や岩手県久慈市の琥珀はピットアンバーであることが分かりましたね。
琥珀の新たな産地として、インドネシアやエチオピアなどに期待がかけられているそうですよ。
今後のニュースに注目しましょう。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか