ジュエリー業界に数年従事。その後別業種に転職しながら、ジュエリー好きが高じて、宝石に関する記事執筆やコンサルティング業務も行う。年に数回海外旅行に行った際には、現地のジュエリーショップや博物館をチェックするのが楽しみ。好きな宝石はカラーダイヤモンド。
色石の買取金額がつかないお店がある3つの理由
宝石には、貴石と半貴石があるのをご存知でしょうか?貴石とは、希少価値があり、また、硬度(石の硬さ)が7以上の物をさします。
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドを四大貴石と呼んでおり、それらの石は小売店や、マーケットでも、高価格で販売されています。ですが、一般の消費者の方が、不要になったルビー、エメラルド、サファイアなどの色石を、街の買取店・質屋・リサイクルショップに持ち込んだ際、その色石にほとんど値段がつけられないケースがよくあるとお客様から耳にします。
色石の買取の値段がつけられない、というのは、購入した価格から、あまりにかけ離れた数千円程度の買取価格だったり、K18やPT900などの地金の金額のみしか買取価格を提示できない、ということです。お店でルビー、サファイア、エメラルドなどの色石を購入する際には、ダイヤモンドの価格に引けを取らない、もしくは、石のクオリティやデザインによっては、ダイヤ以上に高価である場合があるにも関わらず、どうして買取店・質屋・リサイクルショップに売るときは買取金額がつけられないのでしょうか?
その理由をここでご説明いたします。
目次
ルビー、エメラルド、サファイアなどの色石の買取価格の秘密
1)色石は真贋の見極めが難しい
買取店・質屋・リサイクルショップに、ルビー、エメラルド、サファイアなどの色石として持ち込まれる宝石の中には、実は多くの合成石・人造石・模造石が混ざっています。
簡単に言えば合成石とは、天然の宝石と同じ成分を使って、同じ環境下で人が作った石のことです。合成石と、天然石を見分けるのはプロの宝石鑑定士でも至難の業で、たくさんの宝石を見て、経験値を積まなければ正しい鑑定はできません。
街の買取店・質屋・リサイクルショップの中には、もちろん鑑定士の資格をお持ちの、ジュエリーのプロフェッショナルの方もたくさんいらっしゃいますが、そうでない方も多くいるのが現状です。
ダイヤモンドは、ダイヤモンドテスターなどの機械を使えば、色石よりは簡単に、本物かそうでないかを見分けられますが、色石はそうではありません。
よって、ルビー、エメラルド、サファイアなどの色石として買取価格をお客様に提示して、実は偽物だった、というリスクを取るよりは、はじめから買取値段をつけなかったり、その色石についている地金の相場だけで買取をすることがあるのです。
2)色石は地金やダイヤモンドと違って、相場がないため査定が難しい
地金やダイヤモンドは、為替や株のように、毎日変動する国際的な相場があり、それが買取の指標となっています。ですが、ルビー、サファイア、エメラルドなどの色石にはそういった相場がありません。
正確にいうと、プロの宝石業者の間では、それらの色石のマーケット相場というものがありますが、一般の消費者の方や、買取業者の方がそれらを知るのは困難です。質屋や買取屋は、ブランド品や金券や着物など扱う品目が多岐に渡るため、宝石専門業者のように毎月何万石も色石を見ることはできません。そのため、質屋や買取屋が正確に査定することは難しい理由です。
したがって、買取の際も、いまいち値段がわからないということで、高い買取値段をつけるのを避ける場合があるようです。
また、ダイヤモンドは、4C(カラット、カット、クラリティ、カラー=重さ、カット、透明度、色)という、石を客観的に評価するための基準がありますが、色石にはそれがありません。ルビー、サファイア、エメラルドは、産地や色によっては、希少価値が高く、かなり高価買取になるのですが、それを見極めるのは、真贋を見極める以上の経験値が必要です。
3)ルースにした際の、売り先が少ない
買取店・質屋・リサイクルショップがジュエリーをお客様から買取した後、それらをどうするかご存知でしょうか?ブランドジュエリーや、新しいデザインで、そのまま再販できるものを除くと、ほとんどの場合、ジュエリーについている石を外して、石は石、地金は地金として業者に販売します。
業者の手に渡った地金は溶かされて再度製品になり、ダイヤモンドはそのままルースとして、もしくは、再度リングやネックレスに加工されて再度マーケットに出されます。
ルビー、サファイア、エメラルドなどの色石も、古いデザインの物は、そのように石を外して業者に転売されますが、これらの石はルースでの需要が少なく、また製品として加工する際のコストがダイヤモンドよりかかります。たとえば、1ctのラウンドブリリアントカットのダイヤは、大体、縦・横・高さ(深さ)が決まっていますが、色石は、同じ1ctでも、カットが様々であるため、石の寸法にかなりの差があります。石の大きさに合わせて、一つ一つ特注でリングやネックレスの枠を一から作らないといけなくなるため、再度製品に仕立てる費用は、ダイヤモンドと比べると割高となってしまいます。
買取店・質屋・リサイクルショップが買取したものを転売する業者も、その色石ルースから製品にする加工コストを加味して買取店から買取するため、買取店がお客様から買取する値段もどうしても低めになってしまうのです。
ルビー、エメラルド、サファイアなどの色石を手放す際は、
色石に詳しい買取店をいくつかまわって、慎重にご検討されることをおすすめします。
カラッツ編集部 監修
ジュエリー業界に数年従事。その後別業種に転職しながら、ジュエリー好きが高じて、宝石に関する記事執筆やコンサルティング業務も行う。年に数回海外旅行に行った際には、現地のジュエリーショップや博物館をチェックするのが楽しみ。好きな宝石はカラーダイヤモンド。