2019年8月より、カラッツSHOPは色石の「キズ・カケ」についての記載を開始いたします。
ダイヤモンドと違って色石には「キズ・カケ」1つとってもその世界的な標準が無いため、カラッツSHOPとしての基準をここに明記いたします。
「キズ・カケ」とは何ですか?
「キズ・カケ」とは石の外的特徴の1つです。
物の表面の裂け目や、欠けたりした部分を指す言葉として使われる場合が多いですが、カラッツSHOPではこれをより広い意味で用いています。
まず「キズ・カケ」の類義語としてよく使われる言葉に「割れ」や「ヒビ」や「クラック」などがあります。しかしながらそれらの定義や捉え方は人によってかなりバラバラであるため、安易な利用は誤解の元であるとカラッツSHOPでは考えています。そのため当店では2019年8月より上記の用語は全て「キズ・カケ」という用語に統一して記載するようにいたしました。
もちろんお客様の中には、これは「キズ」なのか「カケ」なのか、もしくは「割れ」なのかと気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、大変申し訳ありませんがカラッツSHOPでは今後、このような個別の用語ごとの区別や定義づけは行わない方針ですので、あらかじめご了承ください。また評価もすべて「キズ・カケ」という1つの項目内で行いますので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
加えて、天然の色石にはインクルージョン(内包物)が石の表面にまで達しているような場合や、カッティングや研磨によるスレや加熱痕、もっと言ってしまえば染みや汚れなどの微細な特徴が付き物です。カラッツSHOPではこのような外的特徴は全て上記の「キズ・カケ」の評価対象に含めるようにしています。このようにカラッツSHOPにおける「キズ・カケ」は、一般よりも広い範囲を指すことをご承知おきください。
なお今回はこの「キズ・カケ」から社内基準を一般に公開する運びとなりましたが、今後例えばインクルージョン(内包物)やカラー(色味)についてのガイドラインもしっかりと定め、皆様に分かりやすくお届けして参ります。2019年8月の現時点では、インクルージョンやカラーは写真でご確認ください。
「キズ・カケ」の評価基準
熟練の宝石鑑定士が下記の基準に従いランク付けを行っています。
ランクS+
- 10倍ルーペで「キズ・カケ」の発見が困難なもの
ランクS
- 10倍ルーペであれば「キズ・カケ」の発見が可能だが、肉眼では困難なもの
ランクA+
- 肉眼で「キズ・カケ」の発見が可能であるが、顕著ではないもの
ランクA
- 肉眼で顕著な「キズ・カケ」が見つけられるもの
- もしくはA+レベルの「キズ・カケ」が多数箇所に渡るもの
ランクB
- Aレベルの「キズ・カケ」があり、かつ輝きや耐久性に影響を及ぼし得るもの
なお本ガイドラインは2019年8月時点での基準であり、今後、研究や実例が積み重なるにつれ内容が加筆修正される場合がございます。またこちらの評価付けは色石のルースにのみ行います。ダイヤモンドルースは世界標準の4Cに従ってグレードを表記いたします。指輪やペンダントのような製品の場合、正確なグレーディングが行えませんので対象外といたします。あらかじめご了承ください。
評価基準の実例
石について
S〜Bランクのスピネルを用いてご説明いたします。重さはどれも1ct前後で、大きさは縦横の合計が10mmほど(下記は5mm+5mmのケース)となります。
手に乗せるとこれぐらいの小さなサイズです。なお1ctというのはカラッツSHOPで取り扱う商品のct数のちょうど中央値です。
撮影機材について
カラッツSHOPではオリンパス社の「TG-5」という機種で商品撮影を行っています。当該機種には「顕微鏡モード」というマクロ撮影のモードがあり、ルーペ以上の倍率での撮影が可能です。
これによってカラッツSHOPの掲載写真は、実物より遥かに「キズ・カケ」の視認性が高い状態となっております。実店舗でお買い物をされる時には確認が難しいであろう石の細かな所まで、落ち着いて見ていただきたいと思っています。
ランクS
写真中央部、石の稜線部分にわずかな「キズ・カケ」が確認できましたので、ランクSとしました。
当該写真は石から約1cmの、ルーペ以上の近接距離からマクロ撮影されています。まさに『熟練鑑定士が10倍ルーペを使えば「キズ・カケ」の発見が可能だが、肉眼では困難なもの』と言えます。なお、このレベルの「キズ・カケ」ですらも確認困難な場合は、S+とランク付けされます。
ランクA+
石の中央部、キューレット(先端)に近い位置に白い「キズ・カケ」が確認できましたのでランクA+としました。
なお写真では大きく見えるかもしれませんが、実際はこちらのレベルの「キズ・カケ」となりますと熟練鑑定士でなければ肉眼で発見できない場合も多く、これらを全て漏れなく撮影することは出来かねますことをご容赦ください。
ちなみに同じ石を顕微鏡モードではなく通常のモードで撮影するとこうなります。石自体が小さいので写真のピントが少しズレてしまっています。肉眼での見え方に感覚としてより近いのはこちらです。
ランクA
写真中央、石のキューレット部分に「キズ・カケ」が確認できますのでランクAとしました。
こちらに関しては肉眼でも顕著な「キズ・カケ」と言え、熟練鑑定士でなくとも発見が可能ですので、撮影時にはカメラマンが意識をして撮影を行うよう心がけています。
なおカラッツSHOPでは意図的にランクA以上の商品を中心に仕入れるようにしておりますが、宝石市場全体を見ますとごく平均的なランクと言えます。
ランクB
こちらは石の角に明らかな「キズ・カケ」があり、かつ耐久性に影響を及ぼす可能性があると判断しましたので、カラッツSHOPでは1番下のランクBとしました。
もう1例。こちらはペリドットですが、キューレット部分やテーブル面、稜線に渡って広く「キズ・カケ」が認められるため、輝きに影響を及ぼす(全体的にくすんでしまっている)と判断し、ランクBとしました。
なお当店でこのランクのものを販売する際は「キズ・カケ」部分が確認できるような写真を掲載しておりますので、ご購入の際は必ず事前にご確認ください。エメラルドやフェルスパーなど硬度または靭性が低い石の場合、平均がこのランクBとなるケースもございます。ご不明点などございましたらご注文前にお問い合わせください。
「キズ・カケ」評価を行わない場合について
スター系・キャッツアイ系・クォーツ系など、通常、石の裏側が未研磨状態の石につきましては、表側の研磨部分のみを「キズ・カケ」評価し、裏側は評価対象外としております。
その他ボルダーオパールの様に母岩部分を残している石や、原石などもともと未研磨なものについても同様となっております。なお商品ページにはどれも石の裏側写真も含めて掲載するようにしておりますので、気にされる方はご購入前に必ずご確認ください。
最後に
「キズのないエメラルドは、欠点のない人間ほど少ない」
という言葉をご存知でしょうか。エメラルドに限らず、天然の色石にはどれもキズやカケがつきものです。
カラッツSHOPでは便宜上、「キズ・カケ」の程度によってランク付けを行ってはおりますが、人間に様々な性格や特徴の人がいるように、キズやカケを一方的に「マイナス点」としてのみ取り扱ってしまうのは勿体無いことだと考えています。
むしろ、エメラルドを愛したクレオパトラが「キズも含めて愛した」ように、石のキズ・カケも特徴や魅力の1つとして伝えられる余地がないか、先人に倣って工夫すべきであると思っています。
今後、インクルージョン(内包物)やカラー(色味)についてのガイドラインもしっかりと定めて参りますが、この姿勢には変わりありません。
人工的な工業品ではなく天然の商品を取り扱うからこそ、その自然の機微を皆様に分かりやすくお届けできるSHOPでありたいと考えております。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
カラッツSHOPスタッフ一同